制服




『なんちゃって看護婦』の称号を手に入れた。



 「ど、どうかな?」


グランコクマの宿屋。
が、新しく手に入れた服を身にまとう。
それを目にした女性陣は、黄色い歓声を上げた。


 「すごくお似合いですわ!」

 「うん、可愛い!」

 「良いんじゃないかしら」


照れながらもは、皆からの褒め言葉を受け止める。
彼女の姿を見て、アニスはため息を吐いた。


 「だけど、やっぱ良いよね〜。もスタイル抜群でさ」

 「そ、そう?」

 「そうだよ!みたいな体つきじゃなきゃ、そんな格好できないもん」


少し前に屈むだけで下着が見えそうなほど、短い丈のスカート。
胸元が開いた、半袖の薄紅色の服の下は、彼女の綺麗な足が隠されずに見えていた。


 「あら、可愛いじゃない。何か問題でもありまして?」


露出度の高い服はお手の物なナタリアは、何も思わないようだ。
その横で首を横に振るのは、肌を出すことを恥かしがるティア。


 「私も、着たいとは思わないけど・・・が平気なら、何も言わないわ」

 「私だって、平気だなんて、軽々しくは言えないよ。でも、気分転換も良いかな」

 「じゃあ、その格好で色んな人に会ってみようよ!」


アニスに手を引っ張られ、は新しい服を人に見せに行くこととなった。





【ジェイドの場合】

男に用意された部屋を覗くと、ジェイドが一人本を読んでいた。


 「大佐、見て見て〜!の新しい称号!」

 「・・・これは。また随分と可愛らしいですね」


の姿に驚き、ジェイドは珍しく言葉がすぐに出なかった。
それに気付いたアニスは、茶化し始める。


 「大佐も『ドクトルマンボ』で、医者の格好したらどうですか?」

 「私が医者、ですか?」

 「はい!それで、それで・・・」


アニスは、椅子に座ったかと思えば、足を組んでジェイドを演じているらしい。
そう、彼女の妄想劇が始まったのだ。


 『おや、。どこへ行くんですか?』


椅子の前に立ち、今度はを演じる。
そして椅子に座っている人物に、腕を引き寄せられるかのように足を動かした。


 『せ、先生。離して下さい、次の患者が待ってます』

 『待たせれば良いんですよ。それとも、私の膝の上は居心地悪いですか?』


また椅子に座り、の腰を抱いているように腕をまわしている。


 『先生、ダメですってば』

 『そう言われると、ますます襲いたくなっちゃいますね〜』



 「とか言って、を困らせそうじゃないですか!」


アニスの劇を見て、は、顔を赤くしながら激しく首を横に振る。
ジェイドは、肩をすくめた。


 「まだまだ甘いですね、アニス」

 「ほえ?でも、大佐だったら、こんなプレイしそうなんだけどな」

 「医者よりも、もっと良い立場があるじゃないですか」

 「どこですか?」

 「患者、です」


なるほど、と納得するアニスと、それを笑って楽しんでるジェイドを放って、は違う人の所へ向かった。





【ガイの場合】

宿屋の外へ出ると、ちょうどガイが店から帰ってきた所だった。
が手を振って挨拶をすれば、彼は彼女の姿に一歩下がった。


 「あれ、似合わなかった?」

 「いいいや、似合いすぎてて、驚いただけさ」


まさか露出度の高い服装で、変な所に目がいったとは言えない、ガイ。
適当に誤魔化しておいたが、その言葉はの機嫌を良くさせた。


 「本当?本当に、似合う?」

 「ああ、もちろん。すごく似合ってるよ、看護婦さん」


悪気のない笑みで答えれば、も笑顔になる。
その可愛らしさに、ガイの妄想も膨らんでいった。


 「その格好で看病してもらったら、最高だろうなぁ」

 「あはは、でも私、医療はサッパリだよ」

 「看護婦の見習い・・・それも良いな。その色気たっぷりな服に、艶やかな笑みで注射器を手にしてさ。『痛くないようにするね』とか言われたら、もう」

 「へ?」


それとも診察中に、とガイの妄想が続きそうなのを聞き、はまたしても放っておいて、違う所へ行ってみた。





【ルークの場合】

ルークは、広場にある木の下で休んでいた。


 「ルーク、おはよう」

 「んぁ?何だ、か」


片目だけ開け、姿を確認してから再び眠りにつこうとする。
だが、彼女の普段とは違う格好に驚いて、起き上がった。


 「どうしたんだ、その格好?」

 「新しい称号の服。可愛いかな」

 「良いんじゃねぇの?」


ルークは、ぶっきらぼうに答えたが、は満足そうだ。
彼女のナース姿を改めて見て、ルークは呟いた。


 「なんか・・・その格好で抱きしめられたら、気持ちよさそうだよな」


誰を思い出しているのか、には、なんとなく分かった気がした。
ナースは怪我人や病院にとって、母親的な存在でもある。
母が恋しいのだろうかと、彼女は推測した。


 「試してみる?」

 「・・・うん」


は、腕の中に優しくルークを包み込む。
その暖かさと柔らかさが、彼を心地良い気分にさせた。


 「どう?」

 「このまま眠りたいぐらい、気持ち良い」


数分後、本当にルークは眠ってしまった。
彼を起こさないように寝かすと、はまた街の中を歩き始めた。





【アッシュの場合】

何か用事があったのか。は、港でアッシュの後姿を見つけた。


 「あ、アッシュ」

 「か。何の用・・・」


だ、と言いかけて彼は固まった。
彼女の露出が多い服装を見て、どうすべきか分からなくなったのだろう。
本人はといえば、彼が何故黙ってしまったのかが分からない。


 「どうしたの、固まっちゃって」

 「脱げ」

 「え?」

 「いいから、脱げ!」


の肩をつかんで、鬼のような形相で叫ぶ。
何事か、と周りは様子を見ていた。


 「無理だって!」

 「脱ぐんだ!」


そんな破廉恥な格好などしやがって、とぶつくさ言いながらの服を脱がそうとする。
は慌てて、それを止めるが、力が及ばない。
困っていると、騒動を聞いた仲間達が駆け寄ってきた。


 「アッシュ!何をなさってますの?」

 「何って、こいつの服を脱がそうと・・・」

 「こんな所で、を襲っちゃってるわけ?サイッテー!」


ナタリアとアニスに言われて、彼は外にいる事を思い出した。
耳まで真っ赤にしてから手を離すと、即座に仲間が彼女を囲んだ。


 「ち、違う!これは、訳があって・・・」

 「言い訳ですか。貴方らしくないですね」

 「二度とに近づくんじゃねぇよ!」

 「見損なったぞ、アッシュ」


彼らの一斉攻撃から逃れるべく、アッシュは一目散に逃げていった。





【ピオニーの場合】

騒動を起こしてしまい、達は陛下に謝るべく謁見の間へ向かった。


 「元気だなぁ、お前ら。俺にもその元気をくれよ」


彼は処罰を与えるつもりは、はなから無い。
笑い疲れると、その目はへと移した。


 「まぁ、確かにの格好は、そそるものがあるけどな」

 「そうですか?」

 「おまけに無自覚ときたもんだ」


呆れたかのように笑い、を近くに来るよう命じた。
彼の横まで行くと、の顎を掴む。


 「看護婦さんや、俺の容態を見てくれないか?」

 「私、医療は学んでませんよ」


目の前にあるピオニーの顔を真面目に見つめ返す。
こりゃ参った、とため息をつくしかない。


 「陛下も、もう十分楽しまれたでしょう?私達は、帰らせてもらいますよ」

 「もう少し、の看護婦姿を見ていたいんだが」

 「いえ、はもう服を着替えさせるべきだと思います」


ひきとめようとする彼を、ティアが防ぐ。
ジェイドの言う事は聞かなかったのに、彼はティアの言う事に渋々承諾した。











 「本当に着替えたのか」


次の日、部屋から出てきたの格好を見て、ガイは残念そうに言った。
それを女性陣が睨みつける。


 「あの格好じゃ、戦闘が無理ですもの。当然ですわ」

 「油断ならない狼も多いしね」

 「何か文句ある?」


やれやれ、アッシュと陛下のせいですかね、と言うとジェイドは街の出入り口へと歩いた。
その後をガイとルークが肩を落としながら追い、女性三人は、を囲んで数歩下がった所からついていった。










-back stage-

管理人:くだらない話を書いてしまった。オチなしでごめんなさい!
アニス:本当だよ、結局何が書きたかったわけ?
管理人:・・・何かが書きたかったんだよ。
ティア:放っておきましょう、こんな人相手にしていても時間の無駄よ。
管理人:ひどい!!(泣)

2006.05.16

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