この男・・・いや、少年といった方がいいのかもしれない。
この子は、どうやったらここまで狂うことができたのか。
「何、僕のことが心配なわけ?」
じっと箱を手にする彼を見つめていれば、まるでこっちの心を読んでいるかのよう。
にやりと笑ってこちらをサングラスを通して見つめ返してくる。
「そうね、一目見ただけで異常だと分かるほどだもの」
「言ってくれるねぇ。この僕を『異常』だって?僕は、普通だよ?」
その笑みが怖いから、異常だって言ってるのよ。
それより、早くその治療を受けてくれないかしら。
この子の心が、全然読めない。
「ああ、そうだ。まだ自己紹介がまだだったね。僕は、マオ」
「私は・・・」
「言いたくないなら、言わなくてもいいよ、」
どうやって自分を紹介するか悩んでたら、返された言葉。
私の名前を知ってることに驚かされた。
マオは平然と箱の中にある砂をかきわけて、石や玩具を置いていく。
「それぐらいで驚かれちゃ、困るなぁ。僕は、の事を全て知ってるよ?」
「へえ、全てを?」
「そう、全てを。、昔、人を死なせちゃったんでしょ?」
ただの冗談だと思った。
狂った人は、相手に嘘をつくのが大好きだから。
それに乗ってあげて、少しは彼の心を癒せるかと考えていたのに。
「そんな昔話、どこで知ったの?」
「人の心を読めるんだよ、僕。すごいでしょ?」
サングラスを外して、直に目線を交える。
本当、の話なのだろうか。
「カウンセラーが、患者の言うことを信じてくれないわけ?」
マオは箱をひっくり返して、中に入っていた物全てを出した。
そこから、くまのぬいぐるみを操って喋る。
「罪滅ぼしをしたいから、僕に声をかけてきたんでしょ」
そう、罪滅ぼし。
昔死なせてしまった患者のような事が、二度と起こらないように願って。
少しでも多くの精神病を抱える人を救いたかった。
「僕は別に異常じゃないよ。ちゃんと、僕を愛してくれる人もいる」
「それは、あなたの親?」
「うん。友達でもあり、恋人でもあるんだ。僕がたった一人、心を許せる人」
可哀想に。
それなら、どうして今は一人でいるんだか。
「C.C.は、きっと僕が心配しないように何も言わずに出て行ったんだ。一人なんかじゃない!」
人の心が読めるというのは、本当みたいね。
だけど、その人は貴方を見捨てたのよ、きっと。
もう貴方に愛想が尽きて、他の誰かを求めにいったに決まってるわ。
「違う!彼女が僕を嫌うはずがない!」
「本当に?だったら、どうして彼女は、貴方の隣にいないの?」
頭を抱えて、心が乱れてる。
そこまで苦しいっていうことは、本当は分かってるんじゃないの?
「黙れ黙れ黙れぇぇぇ!」
首をマオに締め付けられて、壁に背中をぶつける。
ぎりぎりと音がなるのを耳にしても、自分の身に起こっている事とは思えなかった。
「目を・・・覚まして・・・」
精一杯、自分の気持ちを伝える。
だけど、彼には届かなかった。
ひたすら彼女を想い続けていたのだろう。
その思いを否定する人間は、忌むべきものだと目が語っている。
「そうだ、は人殺しだったんだね。じゃあ、罪を償わなきゃ。罰を受けなきゃ駄目だよ」
嬉しそうに何を言うんだか。
罰を受けろっていうなら、とっくの昔に受けさせて欲しかったわ。
「だから、今、僕が成敗してあげる・・・て、あれ。もう死んじゃってる?」
腕に力を入れすぎちゃってたかなぁ。
っていう、お節介な人の首から手を離せば、重力に逆らうこともなく地に伏せた。
よく分かんないの。
なんで、この人は僕とC.C.の仲を疑うのさ。
僕達は愛し合ってるっていうのに。
「人のことを心配してたから、自分の恋人を殺しちゃったんじゃないの?」
精神病を患った、愛しい愛しい恋人の治療もできずに殺させちゃって。
そんな罪深いことをしたんだから、罰をちゃんと受けなきゃね。
「ああ、もう僕が罰を与えちゃったか」
反応のない彼女の体の脇に、くまのぬいぐるみを置いてあげる。
これで、少しは寂しくないよね。
僕と違って、独りぼっちなんだもん。
たとえ、ぬいぐるみであっても、寄り添ってくれるものがあれば嬉しいよね。
「待ってて、C.C.。今、会いに行くから―――」
箱庭の世界。
-back stage-
管理:どんどん書いてみるぜ、ギアス夢!
マオ:えー。それなら、僕、自分のよりC.C.のが読みたいよ。
管理:だまらっしゃい。
マオ:ちぇー。この話を書く前にカレンっていう子のを書こうと予定してたはずのくせに。
管理:・・・え?
マオ:だけど、気分がのらないから、僕のを書いたんでしょ?読み手に失礼じゃ・・・
管理:黙ってればいいことを言うな!ていうか、心を読むな!
マオ:ところで、この作品について話さなくていいわけ?
管理:はぅ!?え、えっと、箱庭療法っていう心理療法があるらしいですよ!
マオ:時間が無いからって省きすぎでしょ。
2007.02.06
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