月の光
ぷかぷかと身体を浮かした目の先には、淡く光る月が見える。
綺麗だなぁ。でも、雲が少しかかっていて邪魔かも。
ていうか、なんで満月じゃないのかな、こういう時に。
そんな事を考えながら、ボーっとする。
ただ、その身を任せて、真っ直ぐ月を眺める。
そんな静寂を破る音がし始めて、思わず顔をしかめてしまった。
流れに逆らうように近寄ろうとするその音が、次第に近づいてくる。
「!」
鬱陶しいなぁ。もっと静かにしてくれないわけ?
人がせっかく、心を穏やかにし始めたっていうのに。
顔を向けるのも面倒で、相手が来るのを待つ。
距離が縮まってくると、その反動でこちらの体も荒く揺れた。
「神田が動くから、揺れて酔うんだけど」
精一杯声を出したのに、相手には聞こえないらしい。
いつもキチンと結ってある髪がボロボロに解かれたまま、神田が私の身体を抱きしめた。
せっかく綺麗な顔をしているというのに、今は逆光で彼の表情が見えない。
「、俺は・・・俺は・・・」
ポタリ。
神田が乱暴に海の中を歩いてきたから、波が激しく揺れているんだろうか。
頬に水滴がつく。
いいから放して、私を自由にさせて。
そう言おうとしたけど、月の光が見せたモノは、私の口を閉ざさせる。
先程から嫌というほど顔に当たる感覚がする水滴は、どうやら上から落ちているらしい。
私の目の前には、影になって顔が見えない神田しかいない。
つまりは、彼が泣いているということだ。
うわぁ、珍しい。神田でも泣く事があるんだ。
それが実は汗でした、なんてオチはないよね?
そんな事を何時の間に口にしていたのか、神田は袖で涙を拭ってしまった。
残念。ちゃんと泣いている姿を目にできれば、皆に言い回っていたのに。
みんな〜、神田は泣く事もあるんですよ〜、ってね。
「最後まで下らない事を言うな」
その下らない事を気にしたのは、どこの誰ですか。
それに、最後だなんて何で言うのよ。
誰がこれで最後だって決めたというわけ?
「もう二度とと会う事が無ぇだろ」
そうか、そうだったね。
教団が私の身体を処分してしまうんだった。
「処分じゃ無ぇよ」
似たようなものだ。
ああ、でも私の身の回りの品は、神田が引き取ってね。
別にそれも燃やしてくれて構わないけど。私を忘れて欲しくないだけだから。
「死ぬっていうのに、随分と余裕だな」
もう死ぬ覚悟はできてるからね。
海に身体を預け、心は神田に預けて、目を閉じることにした。
ああ、でも神様は意地悪だ。
意識が遠のく前に、月の光が神田の顔を照らす。
その顔は、思わず死にたくないと願ってしまうほど綺麗だった。
-back stage-
管理:突発的に書いてしまった。
神田:・・・それだけか?
管理:それだけ。
神田:・・・・・・・。
管理:ああ、コメントを貴方に任せようと考えた自分が馬鹿でした。
神田:なんだと!?
管理:じゃあ、何かコメントどーぞ。
神田:・・・(眉間に皺を寄せる)
管理:やっぱり、無理か。
2006.07.08
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