なに、この森。
迷ったの、私?
迷いの森
この森に生えるという薬草を取りに、無謀にも一人で来たのが、いけなかったのかしら。
それとも、未熟者な私が勝手に出しゃばるなという罰でも与えられたのかしら。
いずれにせよ、このままでは遭難死は免れない。
私は、深呼吸をして、少しでも落ち着くように目を瞑った。
また目を開けた時には、冷静に自分が来た道を見つけることができた。
うん。
あとは覚えている道を辿って、帰ればいいだけ。
そのはずなのに、歩いても歩いても出口は見当たらなかった。
「どうしてぇ?」
どんなに道を進もうと、同じ風景の場所に戻る。
何でだろう、どうして私は帰れないの?
溢れ出た涙をきっかけに、泣き崩れてしまう。
みっともない、こんな年齢にもなって迷子とは。
誰でもいいから、私を助けに来て欲しいよ。
「誰か・・・いないのっ・・・」
ごめんなさい、ごめんなさい。
もう二度と自己中心的な考えはしないから。
しないように心がけるから。
先生の言うことも、ちゃんと聞く。
他の人達が言うことも、少しは聞くようにする。
だから、お願いだから、誰か!
「助けてよ・・・」
「お姉さん、迷子?」
屈みこんだ私の前に、膝を台にして頬杖をする赤い眼の少年。
彼が近づいた気配を感じられなかった私は、驚いて慌てふためく。
その拍子に足が絡まって、こけてしまった。
「大丈夫?」
優しく手を差し伸べてくれた少年に体を起こされて、立ち上がる。
立った状態では、私は彼を見下ろす形となった。
ニッコリと微笑む彼が、何故だかこの世の存在と思わせない雰囲気を漂わせている。
・・・もしかして、森の妖精だったり?
「あ、僕は怪しいヒトじゃないヨ。名前は、マオ。よろしくネ!」
よくよく見れば、マオと名乗る少年の手には、トンファーがあった。
本物の妖精だったら、武器を持つ必要はないか。
彼が好意的なのも、純粋に私を心配してくれてるからなのだろう。
「私は、よ。マオは、この森から抜ける方法を知ってる?」
「うん、もちろん♪ここには、何度も来たことあるからネ」
親指を立ててウインクをするマオのおかげで、私は無事に帰れそうだ。
良かった、こんな所で死ななくて。
そう思ったら、止まったはずの涙がまた流れ始めた。
「もう大丈夫だよ、。ちゃんと帰れるから、ネ?」
初対面の私に親切にしてくれるマオ。
その好意に甘えてしまって、泣くのを止められなかった。
「え、?うーん、困ったなぁ・・・あ、そうだ!」
私に声をかけると、マオは彼の人差し指の先を見るよう指示する。
言うことを大人しく聞いて、その指を見ていれば、マオは口を開いた。
「ちちんぷいぷい♪てネ」
小さく火が灯った指先を自慢げに披露した。
彼が火を起こした様子は無かった。
どうやって、火がついたんだろう?
「すごいでしょ?これを見た人は、絶対に元気になるっていう、おまじないなんだヨ」
「本当に?」
「もちろん!だって、も、もう泣いてないじゃん」
言われてから、気づいた。
いつのまに涙が止まってたんだろう。
呆気にとられる私の手を握って、マオは笑った。
「ネ、効いたでしょ?」
「うん。すごいね、マオは。もしかして、本当に妖精なの?」
「妖精?僕が?」
一度、間があってから、少年の笑い声が森の中に響き渡る。
さすがに馬鹿にされちゃったか。
「思った事を正直に言っただけなんだけどなぁ」
「ご、ごめん、ごめん。面白い発想だね。僕が、妖精か。うん、いいネ」
私の手を掴んで放さないマオが、引っ張る。
恐らくは森の出口へ案内をしてくれるのだろうと引っ張られたまま歩くと、少年は振り向いた。
「じゃあ、この森を知り尽くしている妖精が、責任を持ってを外に連れてあげるヨ」
魔法がかけられた森で行く道が分からなくなった町人。
それを助けてくれる、親切な妖精。
何だか、幻想的で現実味が感じられない。
それでも、これが夢のように思えてしまうのは、マオの放つ雰囲気のせいだろうか。
できれば、気づけば一人森の外、なんてことにならないように願う。
もっと、この不思議な少年と会話がしてみたくなったから―――。
-back stage-
管理:やっと書けたよ、マオー!
マオ:何いきなり叫んでるの、このヒト?
管理:長かった!長かったのよ、これを書きたいと思って、早半年!
マオ:うわぁ。もっと早くに書けばよかったのに。
管理:とりあえず、大満足!ちなみに、この森は、いわずとも何処か分かりますよね?
マオ:あんな所に一人で行くなんて、無謀すぎる設定だと思うけどネ。
管理:うっ。言うな、これは夢なんだから。
2007.02.11
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