あのネクロマンサーとひけをとらない実力を持つと言われる女。
そいつが、ヴァンの仲間になってやってきたのは、一年前だった。
パッと見、何の変哲もない女だ。
特に強そうでもなく、普通に町で歩いてそうなやつだ。
俺がその存在に気付いたのは、つい最近。
六神将とは任務以外で関わろうとしないと聞いたから、一緒に任務をこなした事の無い俺が知るはずもない。
その時、ディストの奴とも知り合いだと聞いていたが、会話をしているところを見たことがなかった。
いや、一度だけあった。ディストが怒っているのを笑っているアイツの姿を見た。
奴がいつものごとくネクロマンサーの名を呟いた時、俺は初めてが笑うところを見た。
それが、初めてを目にした時であったというのに。
男一人の名を聞くだけで喜んでいた様子が、気に食わない。
だから、一度だけ俺も普段ならば聞かないようなことを聞いてみた。
「お前にとって、アイツは何なんだ」
主語が欠けていたが、は何の話かを理解しているらしい。
不敵な笑みを浮かべて、聞き返してくる。
「まさか、貴方がそれを気にするとは思わなかったんだけど?」
「質問に答えろ」
俺だって、何でこんな事を聞いているのか分かってないんだ。
これ以上苛立たせることをさせないで欲しい。
腕を組んで、が答えるのを待つ。
頭を傾けると、は呟いた。
「殺してやりたい人、かな」
「は?」
「だから、ジェイドを殺したいのよ」
意味が分からねぇ。
こいつは、笑いながら何を言っているんだ?
は馬鹿みたいに口を開いていた俺を気にせず、話を続ける。
「ああいう完璧そうな人間が平伏すのを見てみたくてね。殺すのが、一番簡単でしょう?」
その様子を思い浮かべてるのか、は楽しそうに笑う。
だが、俺には想像できない。
どうやったら、そんな発想に繋がるんだ?
余程、俺は顔を顰めていたんだろう。
笑みを絶やさず、は人差し指を俺の額に当てた。
「アッシュみたいな、負けず嫌いを殺すのも楽しいかもしれないけどね」
そのまま指に力を入れて、俺の額を押す。
倒されるほどの力じゃないが、急に足がふらついた。
臆したか。
誰が?
俺が。
何に?
こいつに?
「最後まで負けを認めずに死んでいくのかなぁ」
まるで新しい玩具を手にした子供のような目。
そういう顔は、もう少しまともな事に対して表して欲しいと願う。
「ねえ、ジェイドを殺ったら、次はアッシュを殺っても良い?」
子供は、玩具を気に入ったようだ。
だが、俺は不思議と、こいつになら殺されてもいいかと思ってる。
一体、俺はどうしたんだ?
「貴様にそれができるならな」
「本当?約束だからね、それまで誰にも殺されないでよ?もちろん、自殺もダメなんだから」
指切りをしようとが小指を突き立てる。
俺がそんな事をするのを嫌がれば、無理矢理に手を掴まれた。
「約束だよ」
絡まっていた指が離れる。
この先が待ちきれないと言わんばかりに上機嫌で、女は去って行った。
気付かないうちに緊張していた俺は、力なく地に膝ついた。
何だったんだ、今のは。
頭の中で、整理してみる。
俺は、何を思っていたんだ。
考えても、分からない。
どうして、アイツが気になるんだ。
気付けば、自分も思いもしなかった疑問が浮かび上がる。
俺は殺されるかもしれないのに、アイツには恐怖しか感じないはずなのに。
この先、頑張って生きてみるかと思えるのは、何故だ?
俺は、ゆっくりと立ち上がった。
染まる
-back stage-
管理人:お題80で書いた設定の主人公と同じですv
アッシュ:貴様・・・この話は、題名と一致してねぇだろ!
管理人:してるんですよ〜。私がそう言えば、そうなんです!
アッシュ:は!どう繋がってるのか説明を求めなけりゃ分からんのにか?
管理人:うぐぐ。よ、要するに、彼女の色に染まっていくって事で・・・
アッシュ:ありきたりだな。
管理人:ぐすん。泣いてやるー!
2006.07.14
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