after you're gone
- ハスタ
-
「ひまひまひまひまひまひまひまひま」
一人、草原で寝転がり、ハスタはぼやく。
答えるのは、空を飛ぶ鳥の鳴き声。
その音すらなくなると、彼は欠伸をした。
「そんなの、オレは求めてない」
「もっと刺激的なものが欲しい」
少し前まで充実した生活をしていたのに。
やはり、人間とは脆いものだとハスタは思った。
「あ。君、地獄に行ったなら、空を見る必要ないんだポン」
くるりと体を回転させ、地面に顔をつける。
何も見えなくて、彼は再び空を見上げる体勢をとった。
「やっぱ、君は天国に行ったと思うことにしよう、うん」
でなきゃ、オレが退屈になって死にそうだ。
今度は、もっと大きな欠伸。
「リカルド氏に会いに行ったら、剣を交えてくれるさ!」
唐突に浮かんだ暇つぶしに、ハスタは頷く。
勢いよく身を起こし、背伸びをする。
そう考えると、わくわくしてきた。
「お前は、リカルド氏を迎える準備でもしておくんだぷー」
空に手を振り、ハスタは走り始めた。
ハスタは、きっとポッカリと穴が開いてしまって、ボーっとしつつも
すぐに違うもので心を埋めることができる気がする。
after you're gone
- ハルヒ
-
「あんだけ、へらへら笑ってたのに」
激しい雨が降り続ける。
そのせいか、教室の中はやけに静かだ。
それか、人数が一人減ったから沈黙が流れるのかもしれない。
「鬱陶しいくらい、傍にいたのに」
その人物がいなくなってから降り続ける雨。
まるで、忘れてほしくないと言っているようだ。
「急にいなくなるなんて・・・嘘でしょ」
顔をふせて、泣きそうになるのを堪える。
しかし、涙は流れ出すと止まらなかった。
「化けてでも・・・傍にいなさいよ・・・」
その悲痛な叫びは、常世に届かない。
さすがの彼女にもできないことは存在したらしい。
涼宮ハルヒを監視する者達は、思った。
キョンが優しくハルヒに声をかける。
もう何日も学校で泣かれていて、困り果てていた。
この降り続ける雨こそ、彼女の想いを表しているのだろう。
いまだ止まない涙を見ながら、彼はハルヒの頭を撫でてあげた。
非現実的なことを口では言うけど、実際は常識があるハルヒ。
きっと大切な人がいなくなっても、復活はさせないと思う。
after you're gone
- ガイ
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この世界に君がいなくなって、俺の時間が止まった。
どれくらい、俺の悲しみが深かったのかは、分からない。
ただ、昔の仲間が頻繁に会いに来てくれる。
よほど酷い顔をしているらしいのは、予測できた。
どれくらい、君は俺にとってかけがえのない存在かは、分からない。
ただ、手を差し伸べてくれる君がいる。
だから、俺はその手を取ろうとするのに、邪魔が入るんだ。
どうして、君に触れてはならないんだろうか。
目の前にいると伝えても、誰も分かってくれない。
俺が会いたいと望んでいるのに、会わせてくれない。
その悲しさに押しつぶされそうで、俺は怖いよ。
今度こそ、差し伸べられた手を掴んでみせる。
だから、もう一度だけ、君は俺に会いに来てくれないか。
そして、俺はもう二度とその手を離さないでいるから――。
ガイ様、華麗に死に逝く・・・気がします。
普通に死に別れたシチュでないかぎり、精神崩壊しそうだ。
after you're gone
- ヴィレッタ
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いまだに、信じられない気持ちの方が大きかった。
予想外すぎて、頭がついていかない。
たとえ、彼の眠る顔を見たとしても。
その冷たい体に触れたとしても。
私の中から流れ出た悲しみを感じても。
最初は受け入れられなかった。
だけど、たくさん泣いて、すっきりした自分がいた。
きっと、彼は私に前を向いて生きろと言うだろう。
もしかしたら、すでにそう思っていて、
私に対して怒っているかもしれない。
そう考えたら、しっかりしないわけにはいかなかった。
パチンと自分の頬を叩く。
今日から仕事に復帰する自分がいる。
彼に笑われたり怒られないよう、私は私の道を歩むのだ。
彼女は言わずとも、芯が強いお方ですから
一人で立ち直れるかと思いますわ。
ここまで。