流魂街出身だけど、貴族である。
そんな半端さが周りを困惑させ、朽木ルキアの周りに人はあまりいなかった。


それが、どうだろう。
実は、彼女は周りからとても大事にされていたのだ。


今まで、ずっと。


ある事件によって、知ることになった。
彼女は孤独であると感じていたにも関わらず、周りは彼女を愛しているということを。


今までも。

そして、きっと

これからも。













 「おい、!何故、私を無視する!」


俺の意識は、どこかに飛んでいたのか。
気づけば、俺の前には下から睨みつけるルキアがいた。


 「ああ、朽木か。どうした?」

 「どうした、ではない。何度も私が呼んでいたというのに、無視をするなと言っておるのだ」


多分、俺が聞いていなかったことに腹を立てすぎて、用件を忘れているようだ。
しばらく怒られていると、彼女の後ろから騒々しい二人がやってきた。


 「朽木さーん!君に聞けた?」

 「もちろん、行けるに決まってるよな?俺だけに報告しろ!」

 「あ、ずるい!先に聞いて、隊長に自分が報告するつもりでしょ!そうはさせないわよ」

 「んだよ、黙れ、この」

 「あの、すみません。何の話ですか?」


十三番隊第三席の言い合いはキリがないというのは、既に誰もが知っている。
これ以上、時間を潰される前に俺は間に入った。


 「あれ、朽木さん、まだ聞いてなかった?」

 「も、申し訳ありません。たった今、彼を見つけたものですから」

 「実はよ、今夜、隊長が飲みに行こうと誘ってくれてな。もちろん、行けるよな?」

 「今日こそ、一緒に来てもらうわよ、君!」


今まで、ずっと誘いを断ってきても、この隊の人は懲りずに誘ってくる。
二人の顔が近くて迫力を感じていても、俺は冷静に返した。


 「断ります。明日、早番なんで」

 「そんな堅いこと言わないでよ、ね?朽木さんも、君がいた方が良いよね?」

 「へ?・・・ま、まあ、そうですね」


ルキアは迫力に負けて、頷く。
そのルキアを間に挟んだ二人が、仲良く声を揃えた。


 「だから、来い!」


隊長に自分が報告するんだ、と叫びながら嵐が去る。
静かになったところで、ルキアが心配そうに訊ねてきた。


 「。その、すまない。無理矢理に・・・」

 「構わないさ。最初から行かないから」

 「しかし、今約束をしたではないか」

 「あんなの、あっちが勝手に言ってきただけだ。俺が守る必要は無い」


仕事に戻ろうと歩き始めた俺の腕をルキアが引き止める。
俺がルキアを無視していた時よりも、怒っていた。


 「俺は、今までもそうやって、誘われても行かなかった。だから、平気だよ」


馴れ合いなんて、する気が無い。
適当に付き合って、適当に過ごしていれば人と揉めることも無い。
自分を守る、一番良い方法だ。


俺は、別に治安の悪い場所の出身じゃない。
だけど、俺は彼女みたいに愛されているわけでもない。


 「いつも、一人になろうとするのは何故だ」

 「『一人』が好きだからに決まってる」

 「そんなはずはない!誰だって、『独り』は嫌だろう」


分かったような口ぶりをするな。


俺の中で、何かが切れる。
ルキアの顎を押さえて、無理矢理口づけをした。

もがく彼女の口に舌を這い込ませる。
満足して顔を話した瞬間、平手打ちを食らった。


どうすれば良いのか分からなさそうな『悲劇の姫君』に言ってやる。



 「君もっと汚いものを見たほうがいいよ」




彼女に本当の闇を知れとは言わない。
ただ、それは底がないほどに深いものであることを理解してもらえれば。


堕ちていくには、出身だとか環境だとかは関係ないことを。
生き延びる為には、何をしなければならないかしか考えられない生き方をする人もいることを。
誰しもが、愛されるわけではないということを。


本当の幸せを得られる彼女が、それに気づけば。
それだけで、いいんだ。


そうすれば、もっと笑ってくれるだろう?











-back stage-

管理:これを書いてる途中で、パソコンがフリーズするという問題が。
朽木:・・・大丈夫、だったのか?
管理:大丈夫じゃなかったよ!最後の締めを綺麗に書けていたのに、消えちゃったよ!
朽木:それを言い訳に、最後が失敗したなどと言うつもりか。
管理:うーん。最初に考えていたのとは、また違った終わり方にはなった。
朽木:最初はどう考えていたのだ?
管理:そもそも、主人公が君を好きかどうか怪しい感じにしてた。
朽木:・・・・・・。この作品は、鷹隼だけ持ち帰っても良いぞ。苦情は、こやつに言え。

2007.08.31

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