『今日は十三番隊を手伝ってきて下さい』
「大丈夫ですか、浮竹隊長」
病弱なため、仕事をしている時の方が周りから心配される、十三番隊隊長。
今回は、その隊長から人手が欲しいとの要請があったらしかった。
雑用も補うのが零番隊の役目であるため、俺は副隊長に指示されて隊長に会いに来た。
「ああ、か。すまないな、急に」
「構いませんよ。瀞霊廷内の清掃という仕事より楽ですから」
誰がどうしてそんな依頼をよこしたのか。
さすがの副隊長も、その仕事は無視することにしている。
・・・誰だって、そんなのしたくねえよな。
「でも、十三番隊は隊員の数、足りてますよね?そんなに忙しいんですか?」
毎度のことながら、茶を淹れてもらったそれを飲む。
仕事をしていた浮竹隊長の手が止まってるのは、俺のせいじゃないはずだ。
「実は、隊員の一人を一緒に相手してもらいたいだけなんだ」
「はぁ・・・誰ですか、それは」
「朽木だよ」
口にしようとした煎餅を一瞬だけ止める。
「ルキア、ですか」
「溜まってる仕事を色々とやりすぎてるらしいから、無理矢理にでも休憩させてくれって頼まれてね」
第三席の二人は意外と気づくところは気づいてるんだな。
失礼なことを思いつつも、俺は隊長の願いを聞き入れた。
「じゃあ、まずは本人を探してここに連れてきます」
「その必要はないよ。が来る頃に此処に来るようにするって二人が・・・」
「お呼びでしょうか、浮竹隊長」
噂をすれば、なんとやら。
少し疲れた様子のルキアが室内に招かれた。
確かに、休ませてやらないと倒れそうだ。
「唐突だが、朽木はについて、どう思う?」
浮竹隊長の代わりに俺が茶を淹れて、ルキアに差し出す。
渋々それを受け取るが、あまり長居をしたそうには見えなかった。
「どう、とは・・・よく意味が分かりません」
「俺にも分かりませんよ、浮竹隊長」
今度は現世のお菓子に手をつける。
新しく注がれた茶を一口飲んだ後、隊長は微笑んで言った。
「外見も性格も悪くないし、今は立派な隊長だ。なかなか良いと思うぞ?」
その発言に動揺したルキアが茶をこぼす。
慌ててふき取ろうとすると、同じ事を考えたルキアの頭が俺の頭にぶつかった。
目が合い、思わず逸らしてしまう。
「か、からかわないで下さい、隊長!何故、急にそのような話に・・・」
「駄目か?なら朽木も仲が良いし、お似合いだと思ったんだが」
本気だ、この人。
それにしても、いくらルキアを仕事から離れさせるためとはいえ、その話はどうかと思う。
「お前はどうだ、。になら、ルキアを嫁にやっても良いんだ」
「隊長!」
まるでルキアの保護者のような言い振りに、さすがのルキアも黙っていられないらしい。
・・・でも、遊んでみるのも楽しそうだ。
「娘さんを必ず幸せにしてみせます、お父様」
「うん、よく言った!」
「!?」
顔を真っ赤にしたルキアなんて、見たことないな。
おもしれぇ。
だけど、それ以上からかったら口をきいてもらえそうにないから、止めておく。
「冗談だって。そりゃ、俺には好きなやつなんていないけど、お前の気持ちを尊重するぜ?」
「全く・・・だったら、最初から頷くな」
「そうか。二人が結ばれたら、楽しいだろうと思ったんだがな」
本気で残念そうにする浮竹隊長の気持ちがよく分からない。
ルキアと結婚は良いけど、俺にあの朽木隊長と義兄弟になる勇気は無いぞ。
「た、隊長・・・朽木さん・・・さん・・・」
話が一段落したかと思えば、清音が呆然と突っ立っていた。
何事かと俺達は清音を見るが、急に泣き出すと走って出て行った。
「二人とも、お幸せにー!」
置いてけぼりになった脳みそを懸命に動かす。
「・・・見事に、誤解されたな」
「そのようだ。どうだ、、朽木。この際、本当に婚約でもしてみては」
「隊長!」
とにかく誤解を解かなければ、と清音を追ったルキアを見守る。
お茶のおかわりをもらい、隊長と二人で静かに時間が流れるのを感じた。
「結果的に、朽木は仕事に没頭しそうになくて良かったよ」
「まあ、そうですね・・・あ、茶柱が立ってる」
今日も尸魂界は平和だ。
-back stage-
管理:ちなみに、清音はバッチリ噂を広めてくれて、後が大変でした。
ルキ:笑って言うことか!
管理:それなら、君もびしっと嫌だと言えば良かったのに。
ルキ:そ、それは・・・
清音:あれ、あたしが泣いてたってのには、ツッコミなし?
管理:ちっ。いいところでまた出てきた・・・
清音:ちょっと何その態度!?朽木さんの時と違いすぎない?!
管理:やー、愛ゆえに違う態度をとってしまった、ごめんなさい。
2008.04.19
ブラウザでお戻り下さいませ