今日も騒がしく平和な一日を過ごす事となるだろう。






これが日常






両手が塞がってしまうほどの書類を抱え、のんびりと廊下を歩いていた。
ここで俺が女だったら、『持ってやるよ』とか気取った男が言って助けてくれそうなくらいの量。



だが、世の中そんなに甘くは無い。



 「ちゃ〜ん!遊ぼう!」


俺の背中にぶら下がってきたのは、やちる。
飛び掛ってきた反動で、危うく書類をばら撒きそうになった。


 「無理だな。これ見て、分からないのか?」

 「そんなの捨てちゃえば良いじゃん!」


簡単に言ってくれるよ。
これはあの六番隊隊長に渡さなきゃならない書類だってのに。
少しでも紙に汚れがあれば、怒られるだろう。


 「ねぇ、遊ぼうよ〜」

 「せめて、これを届けさせてくれよ」

 「嫌!今遊ぶの!」


駄々をこねるやちるをどうしようかと悩んでいると、また厄介者が現れた。
そいつは俺と視線があうと、ニッコリと微笑んだ。


 「あら、。奇遇ね?」

 「こんな奇遇は、いらないけどな」

 「何よ。私に会えて嬉しくないっていうの?」

 「お前とは出来るだけ関わりたくないんでね」


どれだけ過去に乱菊から面倒くさい仕事を頼まれたことか。
しかも、たいていの場合は私事だ。


 「ところで、十番隊の執務室を綺麗にするのを手伝ってくれない?」


ほら、来た。俺とは全く関係がない事だ。
いつも何処かを汚くしてしまう天才だからな。
やちるを未だに背中にぶら下げたまま、断った。


 「ていうか、執務室って・・・あのチビ、黙ってないだろうな」

 「だから手伝って欲しいんじゃない」

 「駄目だよ、ちゃんはあたしと遊ぶんだから!」


手伝う気なんてないだろうと口を開こうとすれば、肩に手を乗せてやちるが割ってきた。
いや、だから俺はこの書類を提出しなきゃならないんだけど。


 「ごめんね。また今度と遊んでくれる?」

 「だーめ!今じゃなきゃ駄目な・・・」


乱菊と目線を合わせる為か、やちるが俺の手にしていた書類の山の上に乗っかった。
しかし、着地した際、紙で滑り落ちそうになった。


慌ててやちるを抱きかかえ、彼女が落ちるのを防いだ俺は、ため息をついた。
自分で両手を離して書類をばら撒いてしまったからだ。


 「綺麗にばら撒いたわねぇ」

 「あはは、ちゃんドジ〜」


誰のせいだ、誰の!
こみ上げてくる怒りを抑え、拾おうとすればその上にやちるが舞い降りた。


 「とにかく!ちゃんは、あたしと遊ぶの!」

 「あのねぇ、こっちは緊急なの」


まだ言い争うのか!?
呆れながらも書類の上で争う二人を怒鳴りつけようとすれば、再び騒々しい人物が現れた。


 「お二人とも!私の愛す・・・じゃなくて、大切な人に何を迷惑かけてるんですか!」


遠くから走り寄ってきた清音の後ろには、控えめに勇音がついて歩いていた。


 「清音、どっちも意味が同じだから」

 「姉さん!そんな事は聞き流すことよ!」


そうなのか?
でも本人も失敗した事を気づいていたのか顔が真っ赤だ。
これ以上つっこむのは止めておこう。


 「何言ってるの?ちゃんは、あたしのだよ!」

 「馬鹿ねぇ、二人とも。私のでしょ?」


うん、何やらどんどんこの話をナレーションするのも大変になってきたぞ。
何故だかやちるも乱菊も可笑しな事を言ってきた。



 「違います!さんは姉さんのです!」



・・・もう普通のナレーションをさせてくれ。
清音が何でか勇音が言うはずであろう台詞を口にした。


 「な、清音!なんていうことを・・・」

 「恥かしがりやな姉さんの代わりに言っただけよ」


そんなこんなで言い争いは終わる事がなく、ふと気づけば床に落ちていた書類は見事に踏み荒らされていた。
朽木さんに怒られること、間違いなしか。


悲しすぎて涙を流したくとも流せない状態になった時、天使が舞い降りた。


 「さん、どうしたんですか?しゃがみこんで」

 「七緒・・・アレだよ、アレ」


俺は皆に踏まれ続けている書類を指した。
それだけで納得できたのか、七緒は俺に優しく微笑みかけると騒ぎを押さえに行った。


 「皆さん、何をやっているんですか!」

 「ちゃんは、あたしのなの!」

 「ですから、草鹿副隊長の子守をさせられてるだけですってば!」

 「そうよ、は私のなんだから。勝手な事言わないで」

 「だから、貴女のでもありません!」

 「き、清音・・・落ち着いて、ね?」


ああ、駄目でしたか。
彼女の訴えは空しくも相手に聞こえることはなかった。
逆に止めようとする彼女の声も騒音の一つとなってしまった。


誰もこの騒ぎを止める事が出来ないんだろうかと気力無く座り込んでいると、重苦しい霊圧が近寄ってきた。


 「何だ、この騒ぎは」


眉間に皺を寄せて現れたのは、砕蜂だった。


 「知らないよ。とりあえず、俺の仕事が邪魔されたのは確かだな」


細かく説明する気もなく、弱弱しく答えれば砕蜂は彼女達に近寄った。
さすがに砕蜂の霊圧を感じてか、自然とその場が静かになる。


 「何をしている。早く仕事に戻れ」


彼女のこの一言で、皆はその場から離れていった。
やっぱり『隊長』の威厳か?
砕蜂に感謝すると、俺はすっかりグチャグチャにされた書類を集めて仕事に戻った。









朽木さんからお叱りを受けた後、休憩に入った俺は食堂へと歩いていた。
ふと顔を見上げれば、おさげの後姿が目に入る。

 
 「ネムさん、こんにちはー」


声をかけると、俺はネムさんの隣へと寄った。


 「今から休憩?」

 「ええ。さんもですか?」

 「そ。よければ、一緒に食べない?」


二つ返事で誘いを受けたネムさんと共に食堂に入ると、夜一さんが中で座っていた。
彼女に誘われ俺は夜一さんの向かい側に、ネムさんは俺の右隣に腰をかけた。


 「相変わらず食べてますね、夜一さん」

 「おぬしが食べなさすぎな気もするがのう」


俺たちが楽しく会話をしていると、ルキアが食堂に入ってきたのを目にした。
二人に了承してから、ルキアを呼びつけると、彼女は俺の隣へ座った。


そして、桃と烈さんがやってきて、桃も烈さんも夜一さんの隣に腰を下ろした。
俺から見ると桃は夜一さんの左で、烈さんは右だ。


他愛もない話をしていれば、烈さんは夜一さんと話し込んでいた。


 「やはり好き嫌いをせずに食べる事が大切じゃな」

 「そうですね。死神といえど食べなければ死ぬようにちゃんと栄養をとる事は大事です」


とくに彼女らの会話を聞かずに食していると、俺の嫌いな食べ物が現れた。
それを誰も見ていないうちに両隣の皿に移した。


 「。貴様、何をしている?」


ルキアは声を潜めて聞いてきた。
俺も小声で答える。


 「何って、何が?」

 「貴様の焼肉定食に入ってたピーマンを私によこすでない!」

 「い、嫌だなぁ。何を言ってるんだ、ルキアは」

 「嘘を申すな!がピーマン嫌いしてる事は知っておる」

 「誤解だって。俺は、ルキアがもっと成長できるようにと思ってあえて提供してるわけであって・・・」

 「心配はいらぬ。返すぞ」

 「あの・・・さん」


ただでさえルキアを黙らせるのに悪戦苦闘だというのに、ネムさんまで口を開いた。
元々控えめに喋るせいか、声が小さいのは助かった。
声を潜めることを忘れずに聞き入れる。


 「何ですか、ネムさん?」

 「急に味噌汁の玉葱が多くなったんですが」

 「気のせい、気のせい」

 「そうですか?全部食べ終わったはずなんですけど」

 「実はまだ食べてなかったんでしょ」


ルキアが俺の移したピーマンを戻そうとするのを必死に抑えながら誤魔化した。
しかし、さすがにその様子をじっと目撃していた桃は口を閉ざさなかった。


 「君、駄目だよ。ちゃんと食べなきゃ!」


普通に声を出されたおかげで、夜一さんと烈さんに今の状態が明かされてしまった。
やばいな。絶対に何か言われる!


 「ほぅ。はピーマンと玉葱が苦手か。ほれ、なんなら儂のもやろう」


せっかく頑張って減らした緑と白の食べ物が足されて、俺は講義しようと立ち上がった。
だが、烈さんの命令で食べざるを得なくなってしまう。
諦めて座ろうと腰を低くすれば、けたたましい声が食堂に広がった。


 「ちゃーん!遊ぼう!」


再びやちるを背にぶらさげていれば、散っていったはずの人達がまた集結し始めた。




・・・今日も変わらず平和な一日だ。










-back stage-

管:如月様の9889キリリクでした〜。
や:如月ちゃん以外の人は持ち帰ったら駄目だからね!
管:いやー、甘さが全然無くて御免なさいって感じです。
乱:甘いのでやっていけば、主人公ってかなりウハウハな状態になるわね。
管:・・・微エロ<エロで書くぐらいでないとハーレムって難しい。
夜:儂らなら、それでも構わなかったぞ?
桃:それならいっそのこと、選択夢にしたら良かったんじゃない?
管:それしたら、リクから離れちゃうでしょうが!
桃:(そ、そうだった。)あ、如月様、返品可能ですので。

2005.11.20

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