the moonlight and his smile





宴会好きな人達が決めた、隊長格だけの花見。
それは、やはりお酒を飲む席が欲しかっただけのものであった。


お酒を控えめに飲んでいた桃は、酔っ払って賑やかになった皆の様子を遠くから見つめていた。
普段は飲もうとしない日番谷も、無理矢理飲まされている。


その光景が可笑しくて、彼女は自分の隣にいた彼に話しかけた。
しかし、そこには誰もいない。
いつのまにいなくなったんだろう、と思うと同時に、桃は立ち上がっていた。








 「やっと見つけたよ、君」


桃は、屋根の端に座って足をぶらぶらさせているに叫んだ。
まさか探されるとは思っていなかったのか、彼は一瞬驚いてから苦笑した。



 「見つかっちまったか」

 「なんで、流魂街にいるの。せっかくの宴会だったのに」


幻想的にも今夜は、満月。
月光で照らされるの顔に、桃は魅了された。


 「夜桜を楽しむはずなのに、周りは酒に酔ってたからな」

 「それで、ここに来たんだ」



と同じように座ると、目の前に桜並木が視界に入る。
灯りは、月だけで十分な程に綺麗な景色だ。



 「綺麗だね」

 「ああ。嫌な事は、全て忘れられる」


は、哀しげに微笑みながら呟いた。
その心は、何を思っているのだろうと桃は彼の横顔を伺った。

しかし、それを聞いてしまえば、
彼との距離が縮まるどころか遠くなると思った桃は、聞けずに桜を見続けた。



 「綺麗だな」


今度は、から話しかける。
その事だけで、桃は嬉しくなった。


 「うん。すごく綺麗」

 「お前には、この桜がどう映るんだ?」


の心に残るものは、そこまで辛いことなのか。
彼は、ひきつった笑みで質問をした。


 「どう映るか、て言われても難しいね」


率直に答えるとは微笑した。


 「そうだな。今言った事は、忘れてくれ」


そのまま静かに桜を見つめるを見て、桃は何かを言わなければと焦った。
でないと、これ以上に親密になる事ができないと感じさせた。


 「あたしとしてはね」


桃の声を耳にして、は彼女の顔を見つめた。


 「この桜を見て、綺麗だ、て言える人の心が、一番綺麗なんだろうなと思ったの」


今の桃にとって、精一杯の答え。
それをどう思ったのか、くつくつと声を抑えて笑うに、桃は戸惑った。
何か可笑しなことを言っただろうかと心配する彼女を放って、は笑い続ける。


 「そっか」


やっと彼が口にした言葉は、それだけ。

だが、の桜を見つめる目が、先ほどよりも温かいように感じられた。














-back stage-

管:3万打お礼夢小説、桃編。他の作品とは違って、切なめにしちゃいました。
桃:なんで、これだけ?
管:桃には切ないのがお似合いだから?
桃:そ、そんな・・・
管:半分嘘だよ。夜桜をテーマにしたら、切なくなっただけ。
桃:ていうか、フリーなんだから、明るいのを書こうよ。

2006.04.19

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