そういや、センターは、いつだったかな。




what you want

〜嵐の前の静けさ?〜






一月。

新年を桃と迎えて、正月はゆっくりと過ごすはずだった。


 「お、これ、うめぇ!」

 「本当に料理が上手だよね、雛森さんて」

 「うむ、見事なお節だ。私の嫁にならないか?」

 「あはは。ルキアちゃんのお嫁さん、なりたいかも!」


ルキアと恋次は、許そう。
いや、この際、吉良も許せる。
こいつらは、全員、桃の友達として遊びに来てるんだからな。


 「えー、じゃあ俺のお嫁さんになってみねー?」

 「それこそ、笑えるわね。あんたの嫁になんて、が許すはずもないでしょうが」

 「そうですね、檜佐木さんに桃さんを嫁がせるとは思えません」


檜佐木は、ともかくとして。
何で、教員である乱菊と七緒さんが我が家にいるんだか。


 「どうかしたんですか、さん?」

 「別に・・・」


兄妹が一緒だと名乗り方が困るから、と言って平然と名前を呼べるこの二人が怖い。
七緒さんって、こんなに積極的な人だったか?


 「さて、次は初詣に行きますか」


腹を満たした檜佐木が、この場を仕切る。
色々と文句を言いたかったが、桃も乗り気なので止めておいた。


前へ前へ、こっちの気も知らずに歩くこいつ等の後ろについてると、桃が隣に並んできた。


 「今年は、賑やかなお正月だね」

 「先生まで来たからな。何でうちに来たかは知らないが」

 「先生達の年越しパーティの後、松本先生が伊勢先生に住所聞きだして来たんだって」

 「ああ・・・やっぱ、保険医が原因か」


勝手な事をしてくれる。
乱菊のことだから、この状況を楽しんでるんだろうな。


 「ルキアと恋次がいるのは、救いだな」

 「そこまで嫌がらなくても。ところで、お兄ちゃん。いつのまに阿散井君を名前で呼んでるの?」

 「ん?・・・ああ、なんか、女子が阿散井の事をそう呼べって言うから変えたんだ」

 「何のために?」

 「さぁな。変えてみたら嬉しがられて、これからもそうして欲しいってさ」

 「先輩にそう呼ばれるの、すげぇ気持ち悪いんすけど」


疑問を抱いてると、恋次が会話に混じってくる。
どうやら、皆と遅れて歩いていることを知らせにきたようだ。


 「気持ち悪いなら、これからもっと呼んでやるよ、レンジ」

 「・・・俺の名前を呼んでませんでしたよね、今?」

 「別に電子の方で呼んだわけじゃないぞ」

 「呼んでたんじゃないっすか!」


愉快そうに笑う桃の声を聞いて、恋次が止めさせようとした。
こんな事ぐらい、大目に見てやれば良いものを。
だが、遊んでると遠くから乱菊の不機嫌な声がかかったので、急いで合流した。









 「よし!これで一月にすべき事は全部やったな」


初詣も無事に終えて、俺達は家に帰ろうとしていた。
人混みから抜けてすっきりしたのか、背伸びする檜佐木が喋った。
その言葉に、吉良が不思議がる。


 「先輩、受験しないんですか?センターがあるでしょう」

 「あー、俺は仕事に就くことになったから」

 「それは初耳だな。今のバイト先か?」

 「まぁな」


こいつ、将来なんて全く考えてなさそうだったが。
意外にも道は定まってたんだな。
受験という話題から、乱菊が俺の腕に抱きついてくる。


 「はセンター受けるんでしょう?随分と余裕ねぇ」

 「テストなんて、適当にやれば受かるものなんです」

 「それは、さんだから言えることですよ・・・」


俺の脇が、教員によって埋め尽くされる。
これじゃあ、桃の隣に行く事ができない。
仕方ないから、俺の前を歩く檜佐木と喋っていた。


 「あとバレンタインを迎えたら、俺達は卒業なんだよなぁ」

 「残念だったな、檜佐木。熱烈なチョコをもらえるのも、今年で最後だ」


去年、ハズレが当たった檜佐木のチョコを思い出す。
食べていないのに、何でか吐き気がした。
それほどに見ているだけで気分を害するものだった。
檜佐木も同じ事を考えてたのか、しかめっ面をしていた。


 「あんなの、本当に愛情がこもってるのか怪しいところだ」

 「そういや、俺らの学校、特殊なバレンタインらしいっすね」


恋次が聞かなくても良い事を聞いてくる。
何で、俺達があの天国とも地獄ともとれるイベントについて話さなくちゃいけないんだ。
だけど・・・こいつ、女子に人気だよな。
目だけで檜佐木を見ると、相手はにやりと笑った。


 「よし、!こいつが、ろくでもないチョコを貰う方に五千円賭ける」

 「こいつは、意外と運が良さそうだから、当たりを貰う方に五千円」

 「あら、だったら私は吉良がハズレをもらうに一万円」

 「松本先生!仮にも教員が何を言ってるんですか」

 「冗談に決まってるじゃないですか、伊勢先生」


そのわりには、高額だな。
俺も乱菊と同意見だが。
勝手に賭けの対象にされてる二人は、呆然と話を耳に流していた。


 「バレンタインは、何かあるのか?」


ルキアが説明を求める。
桃も興味深々に、俺達を見つめた。
その桃の頭を撫でて、俺は誤魔化す。


 「学校に戻れば、担当から教えてもらえるから」

 「それまでの楽しみにしておくんだな」


意地悪な先輩の言葉で、一年が不満そうにする。
だが、これは俺達なりの配慮だった。
束の間の幸せをかみしめるように、と。













-back stage-

管:・・・おう?もう、連載が終わりに近づいていた!
桃:うそ!?そんなに話を書いてないよね、これ?
管:早いねぇ、あと2月と3月が来たら終わっちゃうよ。
乱:意外にもあっさりしてるのね、この話。
管:近親相姦が行き過ぎないように気をつけてるからねぇ。
七:だから、内容も深くないんですね。
管:痛いことを言うな。終わってからも要望があれば、もっと過激な話をつけるさ。

2007.01.15

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