面倒事って、更に面倒を引き出すだけだな。




what you want

〜変化part1〜






七月。

学園祭での盛り上がりはすっかり冷め、これから始まる夏休みを楽しみにしている時期だ。
先月の出し物では、俺のクラスが一番売り上げが高かったが、金はすべて学校へ寄付する事になってる。
クラスメートが泣きながらその大金を担任に渡していた。



あとは夏休みまで、テストが残ってるだけ。
本来ならば真面目に授業を受けるべきなんだろうが、今日は気分が乗らない。
得意な科目であるし、サボろうと廊下を歩いていた。


 「やあ、雛森。暇そうだな」


保健室へ向かってる途中に厄介な先生に出くわした。


 「浮竹先生。今日はいらしたんですね」

 「今朝は体の調子が良かったんだ」


この体育を担当する先生は昔から休みがちで、教師ですら彼を頼りにする事は無い。
そんな人と出会ってしまっては、何か面倒を頼まれそうで不安だ。
早急にこの場から離れようとしたが、安易に捕まってしまった。


 「実は、今からプールの授業でな。しかし、また具合が悪くなってきたんだ」


どう見たって、元気そうに見えるのは確かだ。
絶対に自分が外に出たくないだけだろう。

大きな袋を俺に差し出すと、先生は気味が悪いくらいに微笑んだ。


 「この中に海パンが入ってるし、元生徒会長のお前になら任せても大丈夫だろ」

 「いえ、あの、俺は・・・」

 「心配するな。日焼け止めもちゃんと入ってるぞ」

 「そうではなくて、俺は授業に・・・」

 「先生には俺から伝えとくよ。じゃ、よろしく頼む」


一方的に話を進めると、先生は俺の来た道を辿って行った。


何で俺が授業しなければならないのか疑問だが、良い暇つぶしにはなるかと思ってプールへと向かった。









今日のプールの授業は、どこのクラスかを聞くのを忘れていた。
その事を思い出しつつも、別にどこでも良いという気持ちから生徒が待つ場所へ歩み寄った。

上に白のパーカーを着て麦藁帽子を被る俺の姿は、格好悪いものだろう。
俺が近づくと、騒いでいた生徒らが静かになった。


 「浮竹先生が倒れたから、俺が代わりに受け持つ事になった。よろしく」


見たところ、相手は一年。
これなら適当にやる事を与えておけばよいかと考えてると、視界に見慣れた人物がいた。


 「桃。お前のクラスだったのか」

 「あ、うん。ていうか、お兄ちゃん授業はどうしたの?」

 「先生に無理やり代わりを頼まれたんだよ」


そう言いつつ、改めて桃の姿を見つめた。
初めて見るスクール水着の格好は、理性を崩せるほどの可愛らしさがある。
予想もしていなかった収穫に喜びつつ、なんとかその授業をのりきった。









浮竹先生に借りた物を返した後、再び俺は人に出くわした。
伊勢七緒先生。


 「雛森さん。ちょうど良かった。今、よろしいですか?」

 「はい。どうかしたんですか?」

 「貴方、まだ個人面談を受けていないでしょう。それをするのです」


担当でもない彼女が出てくるとなると、相当てこずってたんだな。
将来なんて何も決めてないから、面談ができないだけなんだが。


彼女の後ろを歩いて、資料室へと入っていった。
まさか彼女とこの部屋を再び訪れることとなるとは。


 「どうかしましたか?」


すでに部屋にあった椅子へ腰をかけていた彼女は、問いかけてきた。
俺は意を決して、向かい側にある椅子へと向かう。


 「懐かしいと思って。そうでしょ、七緒さん?」


昔の呼び名で答えれば、彼女は戸惑いを隠せなかった。


 「その名はもう呼ばないと言っていたのに」

 「すみません。うっかりしてました」

 「・・・ここで、さんと初めて会ったんですよね」


ああ、しくじった。
俺は桃の事を想い始めて、この人と別れたのに。
この人は、まだ俺の事を想ってる。


これ以上関わっては危険だと脳内に信号が出る。
教室に戻ろうと席を立つと、背後で声をかけられた。


 「さん。やっぱり、私は貴方の事を忘れることはできません」


無視してドアへと近づく俺に彼女はとうとう叫んだ。


 「私は、さんの事が好きなんです」


そんな事を言われても、今の俺はその気持ちに答えることはできない。


ドアを静かに開けて進むと、何かにぶつかった。
何だろうと目線を下にすれば、青ざめた顔の桃が立っていた。


 「桃。こんな所で、どうしたんだ?」


笑って聞いてみるが、返答はない。
心配になって肩に手を乗せると、突然涙をこぼし始めた。


何がどうなってるのか分からない俺は、慌てて宥めようとする。
しかし、桃は泣き顔を見られたくないのか屋上の方向へと走っていった。










-back stage-

管:今回は短めで行きました!
桃:本当に短い・・・何が起こってるのか全然分からないね。
管:それは、このお話の桃視点で補うのでーす。
七:私との関係についてはどうするんですか?
管:・・・これ、桃相手の長編だから・・・馴れ初めは番外編として書くかも?
乱:て、ことは私との話も書く可能性があるわけね。
管:可能性があるだけ、だったり。
桃:ええ!?この設定で松本先生や伊勢先生との出会いも見たい人は、言って下さいね!

2005.02.03

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