どうして、こんなに胸が痛むの?
what you want
〜変化part2〜
七月。
文化祭も終わって、周りはすでに夏休みを待ち遠しくしていた。
模擬店で一番売り上げが良かったのは、お兄ちゃんのクラス。
その次に私のクラスと、阿散井君達がいるクラスが次に売り上げが良かったみたい。
皆は、私やルキアちゃんのおかげだって言ってたけど。
そんな事になるような程、がんばってたわけじゃないからその意味が分からなかった。
「急げ、桃。行くぞ」
「待って、ルキアちゃん」
うぅ、なんで水着って着にくいんだろう。
先にプールへ向かうルキアちゃんに慌ててついていった。
クラスメートが騒いでいないことから、もう先生が来ていた事を悟らせた。
でも、平気だよね?
浮竹先生が担当のはずだから。
そう思って皆の元へ近寄ろうとすると、麦藁帽子で顔が見えなかった先生の顔が見えた。
え、なんでお兄ちゃんが、ここにいるの?
お兄ちゃんも私に気付いたみたいで、声をかけてきた。
「桃。お前のクラスだったのか」
「あ、うん。ていうか、お兄ちゃん授業はどうしたの?」
「先生に無理やり代わりを頼まれたんだよ」
肩を竦めるあたり、やりたくないんだろうなとお兄ちゃんに同情してしまった。
でも私がお兄ちゃんと話をしていると、クラスの子達が私を押しのけてお兄ちゃんに話しかけていった。
急にお兄ちゃんが囲まれてしまって、私は一人取り残された気分になる。
「本当に人気者なんだ、お兄ちゃん」
「何だ。から卒業したんじゃなかったのか、桃?」
独り言に返事がくるとは思わなくて、少し驚いた。
「ルキアちゃん」
「嫉妬でもしてるのか?」
「そ、そんな事・・・」
無いと言いたかったけど、授業が始まって言い終えることはできなかった。
なんでか、それで安心している自分がいる。
プールの授業を終えて着替えてから、まだ授業が始まるまで時間があった。
お兄ちゃんに今日、帰りが遅くなることを伝えようとした私は、職員室を覗いてみる。
中で浮竹先生を見かけて、声をかけてみた。
お兄ちゃんはすでに来た後だと聞いて、私は探すあてもないので教室に戻ることにした。
帰りの途中で、お兄ちゃんが伊勢先生と資料室に入っていく姿を見かけた。
外で待っていれば、すぐに出てくると思ってドアへと近寄る。
すると、中から声がした。
「私は、さんの事が好きなんです」
一瞬にして頭の中が真っ白になる。
・・・今、なんて?
ドアが開いたことにも気付かなかった私は、出てきたお兄ちゃんとぶつかってしまった。
見上げると、微笑んでくれるお兄ちゃんがいる。
「桃。こんな所で、どうしたんだ?」
お兄ちゃんは、私が何も聞いていないとでも思ってるのかな。
肩にのせられた手から伝わる暖かさが、胸の傷をえぐられる気がした。
溢れ出る涙を拭うことより、早くこの場から離れたくて、お兄ちゃんの言う事も聞かずに屋上へと走りだした。
授業が始まるせいか、屋上には誰も人がいなかった。
と、思ったんだけど。
「雛森くん。どうしたんだ、一体?」
吉良君に私が泣いていることがバレてしまった。
彼は優しいから、どんなに大丈夫だって伝えても、授業に行こうとはしないで一緒にいてくれた。
「落ち着いた?」
「うん、ありがとう」
好意に甘えて、泣くだけ泣いたら気持ちがスッキリした。
やっぱり、何でこんな状態になったのかを吉良君には言った方が良いかな。
「あのね。実はさっき、ある先生がお兄ちゃんに告白するのを聞いちゃったの」
「・・・雛森先輩に教師が告白って、その、付き合うかどうかっていう?」
「そう。私も驚いちゃった」
伊勢先生って美人だし、優しいし。
でも、しっかりしてるから、お兄ちゃんを十分に支えてあげられるんだろうな。
そんな事を思うと、また涙が溢れてきた。
「それと、雛森くんが泣くのは、どう繋がってるわけ?」
「多分な話だけど、悔しいんだと思う」
「悔しい、か。とことん、お兄さん好きなんだね」
苦笑する吉良君の言い方は、何でか心にひっかかった。
『お兄ちゃん好き』は自覚があったつもりだったけど、ここまで酷いものだっけ?
「ただのブラコンなのかな」
「ん?」
「あ、ううん。なんでもない」
また独り言がでちゃったけど、今回は聞かれなかったみたい。
その事に胸をなでおろすと、私は他愛もない話で、一緒にサボることになってしまった吉良君と時間を過ごした。
-back stage-
管:実は、7月はまだあと1つお話があったりする。
桃:ま、まだあるの!?
管:だって〜。桃の気持ちを定かにする事件は夏休み前に起こしたいんだもん。
イ:管理人の我侭か。
管:あぁ?なんか文句あっか、吉良坊?
イ:い、いえ。何も・・・(何だ、この態度の差!?)
2006.02.12
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