タイミング悪すぎだろ、いくらなんでも。




what you want

〜変化part3〜






七月。

テスト週間が、そろそろ終わる時期。
元々、この学校は優秀者が多いせいか、周りはいつもと変わらない雰囲気だ。


 「さんは、夏休みどうするんですか?」

 「別に。ダラダラしてるんじゃないかな」


そんな中、俺は何故か、今日も数学の研究室に入り浸る。
すっかり俺の事を昔の呼び名で接する七緒さんには、呆れた。
『恋する乙女は強い』という意味が、やっと分かった気がする。
付き合ってた時は、酷いことをしていた事を、この人は忘れてないか?


 「でしたら、休みの間、どこかへ行きません?」

 「外出したいと思ったら、そうします」


適当に話を流しつつ、頼まれた仕事を済ますと、俺は出て行った。






帰りに、俺は一年四組の教室へ向かった。


 「阿散井、いる?」


ドアの近くで立っていた女子に頼むと、本人はすぐに現れた。
呼んでくれた子に感謝したのを見て、阿散井は口を開いた。


 「先輩、所構わず女子を口説かないで下さい」

 「笑ってもいない顔で、口説けるわけないだろうが」


本当に、兄妹揃って鈍い性格してるぜ、と阿散井がぼやいたのを見逃さなかった。
だが、俺は、それを聞くために来たわけじゃない。


 「お前、最近、桃と喋ってるか?」

 「は?喧嘩でもしたんすか?」

 「そんなところだ」


実際は、俺が桃に避けられてるだけで、何が原因なのか分からない。
だから、あいつの友達で、勘ぐられない阿散井に質問してみた。


 「いつもと変わらないと思いますよ。・・・あ、吉良に聞いてみます?」

 「吉良?何で、あいつに」

 「ここの所、頻繁に雛森に接触してるんすよ。あいつだったら、分かるかも」


今呼びますね、と言う阿散井を止めて、俺は別れを告げた。


どういうことだ?
何で、桃は俺を避けて、吉良を受け入れてるんだ?

まさか、桃が吉良に好意を寄せてるわけじゃないだろう。
仮にそうだとしても、俺を避ける必要は無い。
いや、だが、桃があいつを好きになるなんてありえないことだ。



解決しようのない問題に悶々としていると、偶然にも桃に出会った。
大量の資料を抱えていて、資料室の戸を開けられないようだ。
無言で扉を開くと、桃は驚いていた。


 「こんなに抱えて。他に手伝う奴は、いなかったのか?」

 「職員室に寄ったら、帰りに頼むって言われて」


俺の顔も見ずに突き進む桃の腕の中から、半分資料を奪った。
資料を置くべき場所に戻して、今度は手渡すように手を差し出した。
手伝わせようとしない桃は、無視して片付けていく。


 「俺、怒らせるようなこと、したかな」

 「してないよ」

 「じゃあ、俺と会話しないのは、何で?」

 「今、苛々してるの。だから、話したくない」


俺のせいでは無い事に、胸をなでおろす。
しかし、それでは吉良とは喋れることに疑問を抱いた。


 「だったら、吉・・・」

 「どこ触ってんのよ、いやだってば〜」


どこのどいつだ、俺達の会話を邪魔したやつは。
睨みつけようかと思ったが、入ってきたのはカップルだった。

もう授業が始まるっていうのに、お盛んなことで。
どうやら、その二人は、棚の奥にいる俺達の姿が見えないようだ。
誰もいないと思っているのか、服を脱ぎ始めてる。


馬鹿だな、あいつ等。
授業が始まりそうな時に、わざわざ全裸になるなんて。
せめて下だけにすれば良いのに。


隣にいる桃が声を出さないよう、右手で口を閉ざす。
予鈴が鳴れば、こいつ等は出て行くだろう。
すでにやる気の二人を邪魔して出て行った方が、後でややこしい事になると考えた俺は、じっと待った。






予鈴が鳴ると、予想通りカップルは資料室から出て行った。

あまり気は乗らないが、生徒会に密告しておくか。
桃みたいな純粋な生徒には、迷惑だしな。

桃の事を思い出し、口を押さえていた手を離した。

ああ、俺も馬鹿だった。
何で耳を塞がなかったんだろう。


たちすくんでいる桃に、どうやって接すれば良いか考えた。
声をかけても、桃の体に触れても、逆効果かもしれない。
すると、またしても桃は黙って、俺の前から姿を消した。


せっかく、桃と会話できるかもしれなかったのに。
この怒りを抑えるためにも、俺は生徒会にさっきのカップルを名指しで伝える事にした。








-back stage-

管:いやはや、桃には可哀相なことをしました。
桃:本当だよ!な、なんで、学校であんな事する人がいるの!
管:どうしてだろうねぇ。不思議だ。
桃:書いたのは、あなたでしょう!
恋:こいつに言うだけ、無駄だろ。

2006.03.14

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