夜道での一歩


仕事を終え、一人の副隊長は廊下を歩いていた。


 「お疲れ、七緒」


残業で疲れた七緒に声をかけるのは1人の青年。


 「さん。何故、あなたがここに?」

 「嫌だなぁ、七緒。俺の下の名前で呼んでよ、深い仲なんだし」

 「そうですか。では、失礼します」

 「あ。流されちゃうのも寂しいんだけど」


早く帰って眠りたいと思っている彼女は、相手にしない方が賢明だと理解している。


 「つれないなぁ。ま、そんな七緒も好きだけどさ」


そして、相手もこれぐらいで引く人ではないことも。


 「いい加減、私をからかって遊ぶのは止めていただけますか」

 「七緒のことは本当に好きなんだけど」

 「全く。あなただけでも質が悪いのに、京楽隊長と組まないで下さい」

 「京楽と組んだ方が楽しいのに」


年齢は京楽よりも年下であるのに、しかも隊長格である人を呼び捨ての扱い。
何時の間に仲良くなったのかと七緒は心の中で嘆いた。


 「あの人と仲良くしたら、さんが更に変態扱いされるようになりますよ」

 「あー。でも京楽に会った方が、七緒と鉢合わせる事できるんだよな」

 「・・・そ、それだったら、最初から私に会えばいいじゃないですか」


あどけない笑顔に頬を少し赤くしながらも、七緒は会話を続けた。


 「俺も最初はそう思ったけどさ」

 「なら、次からはそうして下さい。最も、相手はしていないでしょうけど」

 「そうなると思ったから、京楽と居るんだって」

 「よく分かってるじゃないですか」

 「そりゃ、愛してる七緒のことだからな」


また微笑みかけるに七緒は顔を背ける。


 「からかわないで下さい」

 「だから、からかってないって」

 「その口はどうやったら、閉まるんですか」

 「ちょっと考えるから待ってろ」

 「考えなくて良いですから」


皮肉で言ったつもりだったのに、は腕組をしてうなり始めた。


もう無視して帰ろうかしら。


自分が疲れていたことを思い出した七緒は、再び足を動かす。


 「分かった!」


突然七緒を壁へと押しやり、は彼女が出られないよう己の腕を柵にした。
はたから見れば、彼が襲っているようにしか見えない。
だが、彼の口からは全く違う言葉が出てきた。


 「眼鏡外してよ」

 「え?」

 「眼鏡外して、髪も下ろして」

 「な、何でですか?」

 「絶対に綺麗だから、俺、見とれて黙っちまう」


そんな事を言われるとは予想しなかった七緒の顔は耳まで真っ赤になる。
それでも、は笑みを崩さない。


 「馬鹿な事言ってないで、帰らせてください」

 「嫌だね」

 「私は眠いんです」

 「だったら、ここで寝ればいい」

 「立ったまま寝れません」

 「出来るって。現世の忙しい人間は皆できるし」


何時までたっても放そうとしてくれないに七緒は諦めた。


 「せめて、これからは名前で呼ぶということで、許してください」

 「んー・・・ま、それでもいいか」


は彼女の耳元で楽しみにしとくよ、と呟く。
すると、開放してあげようと体を離す前に、同じように七緒に囁かれた。


 「さんを呼び捨てにするお願いは無理ですからね」






-back stage-

七緒:な、なんだか最後が私でないような・・・
管理:お姉系で良くない?
七緒:キャラのイメージを壊して、どうするんですか。
管理:なんだよー、様に惚れてるくせに。
七緒:な!?そ、そんなさんの事は関係ないでしょう!

2005.09.13

ブラウザでお戻り下さい。