その儚げな瞳が


今にも折れそうな華が


目に焼きついて離れない





華を愛でる





 「さん」


名前を呼ばれて振り返れば、控えめに微笑む愛しい人。


 「ネムさん。今日は大丈夫なんですか?」

 「ええ。マユリ様に用は無いと追い出されました」


内容的には喜ばしいことではないが、そのおかげで会えるのだ。
嬉しくないはずがない。


 「では、今日は久々のデートですね」


気持ちが高ぶって言うと、ネムさんは僕の手を取る。
何事かと思えば、耳を傾かなければ聞こえない程小さい声で喋った。


 「今日はさんと2人きりになりたいです」


そんな事を言われて、嫌がる男なんていないわけで。
僕達は逢瀬の度に使用する隠れ家へ向かった。








その日は何故、馬鹿な事をしたのか分からない。
この、隠れて付き合わなければならない状況が嫌だったのかもしれない。




どんだけ隠れていようが、あの人が気づかないはずないというのに。




ネムさんの首に鮮やかに咲かれた華を見つめていると、彼女は心配そうに口を開いた。


 「やはりこれでは、見つかってしまいます」

 「大丈夫。分かっててやっているんですから」

 「でも」

 「そろそろ、終わりにしなきゃだめなんですよ」


そうでなくては、正々堂々と勝負が出来ないじゃないですか。
・・・きっと、あの人はそんな手をうつとは思えないけど。








次の日、非番だった僕のもとにあの人がやってきた。
もちろん、ネムさんが後ろに控えて。



あぁ、この様子じゃ戦わせてももらえない。



瞬時に悟ったが、それはそれで構わないと思った。


 「君に是非、実験体になってもらいたくてネ」


とうとう来たのだ。この人から成敗を受ける日が。
ネムさんを愛してしまった罰を償う日が。


後ろのネムさんに目を向けると、何時もの無表情をがんばって作っている。


嗚呼、そこまで僕の事を愛してくれただけで、満足です。


懸命に笑いかけるのに、彼女は笑うどころか泣き始めてしまった。
そして、僕は泣く彼女に近寄ることも許されないまま、連れて行かれる。



 「愛してますよ」



本当に愛しています。


だから、死ねるんです。


だって、僕が好きになったのは、儚げな貴女なんですから。


貴女を女らしい生き物にしてしまった僕は、消える他ないんです。


僕が死ねば、きっとまた脆い華が咲いてくれると思えるから。


僕はその為の肥料となります。




さようなら、ネムさん。


どうか、僕以外の異性を好きにならないようお祈り申し上げます。










-back stage-

ネム:怖いですね。
管理:やっぱり?でも、その儚げさが好きなんだよ、ネム!
ネム:私だって、甘い夢を見させて欲しいです。
管理:あー・・・それは、お客様の要望があれば、で。
ネム:(ネタがあるくせに。)マユリ様に頼むよう言います。
管理:!!!(それって脅し!?)

2005.09.16

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