今日は現世での定番なデートというものをしてみる。
目的地
「良かった、晴れた!」
数日前たまたま現世に来た時、デートの日は雨という予報を知ってしまったから救われた。
心底嬉しそうに叫んでしまったが、ネムを放ったらかしにしていた事を思い出して後ろを振り向いた。
「良かったですね。」
彼女は俺の言動に腹を立てなかったみたいで、笑顔で答えた。
そんなネムを思わず抱きしめたくなる。
しかし、街中では止めておこうと気持ちを抑えると、俺はネムの手を取って今日の目的地へと向かった。
平日の遊園地は人が少なく、動きやすそうだった。
「どれから乗ろう?」
俺も彼女も初めての遊園地。
何もかも新鮮だ。
「あの乗り物に乗ってみたいです。」
ネムが指した方向を見てみると、そこにはジェットコースターがあった。
すごい速さの乗り物であることが見て分かる。
面白そうで、期待で胸が膨らんだ。
走って乗り物の入り口へと走ると、ネムも慌ててついてきた。
あれから、色々な「絶叫マシーン」と呼ばれる物を乗りまわって。
俺は、気分を悪くした。
「大丈夫ですか?」
せっかくのデートだっていうのに、格好悪い事しちゃったよ、俺。
まさか、ここまで気持ち悪くなるものだとは思わなかった。
「平気。」
短く答えると、俺はベンチに腰をかけた。
気分が良くない今は、どうしても背が丸まってしまう。
ネムは飲み物を買ってくる事を伝えると、何処かへと走っていった。
やっぱ、格好悪いよなぁ。
いくら初めてだからって、乗り物に弱い事をもう少し早く気付けただろうに。
調子にのって、次々と遊園地を回ったのがいけなかったか。
逆にネムはずっと楽しんでたようだ。
どんなに速い乗り物に乗っても動じなかったが、降りた後は爽快感溢れる笑みを浮かべていた。
ネムが気に入る場所を見つけたと思えば、俺は苦手な場所とは皮肉なもんだ。
「お待たせしました。」
飲み物が入った紙コップを手渡すと、ネムは俺の隣に腰をかけた。
「さん、気分はどうですか?」
「楽になってきた。」
黙って飲み物を口にすると、彼女も黙っていた。
なんだか、この沈黙が俺にとって更に辛くなった。
「ごめんな。」
隣でネムが驚いた顔をする。
謝られるとは思ってなかったみたいだ。
「デート、台無しにした。」
気分が悪いと威勢も悪い。
聞こえたかどうか怪しい、小さな声で謝った。
「気にしてませんよ。」
目を細めて愛しそうに見つめてくれるネムは、俺の手を握った。
「気分が落ち着いたら、この近くにある水族館へ行って見ませんか?」
「水族館?」
「人混みよりは、少しでも自然に囲まれた方が落ち着きますよ。」
何時の間にそんな場所を調べたのか聞いてみたら、飲み物を買う時に聞いてきたそうだ。
そこまで俺の事を考えていてくれたのは、正直嬉しかった。
「じゃあ、水族館にでも行くか。」
今からだったら、まだ時間はたっぷりある。
俺は元気よく立ちあがった。
「無理しないで下さい、さん。」
「平気、平気。ネムと楽しく過ごす時間をちょっとでも増やしたいしね。」
まだ俺の顔は血の気が少ないだろうけど。
精一杯の笑顔で、俺は手を差し出した。
彼女は、圧倒されながらも手を重ねると、俺達はまた新たな目的地へと歩いていった。
-back stage-
管理:今回はネムに面倒を見てもらう様でした。
ネム:なんだか、管理人の欲望が現れているような・・・
管理:だ、だって!ネムに看病されてみたかったんだもん!
ネム:はぁ。ですが、私は人混みは・・・
管理:嫌いそうだよね。でも、絶対に絶叫マシーンは無表情で乗ってられると思う。
ネム:(一体どんな想像されてるんだろう、私って)
2005.01.19
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