こいつの言う事に従うことは好きではない。

だが、反抗すればもっと酷い仕打ちが返ってくるのだ。





obedience





 「遅かったじゃない、


元気に声をかけてきた乱菊は、平然としていた。


 「謝る必要なんて無いだろ、そっちが勝手に呼び出して。てか、何で此処?」


現世から持ってきたのか、こたつに入って暖をとってる乱菊に問いただす。
しかし彼女は悪気を感じてないようだ。


 「こたつには電気が必要でしょ。此処だと、電気が通るの」

 「そう。じゃ、俺は帰るわ」

 「なんで?もっとゆっくりしていきなさいよ」


冗談じゃないね。
いくら電気が通るからって、俺は日番谷隊長の家に不法侵入をしたくない。
あいつが怒ったら、乱菊じゃなくて俺に怒りをぶつけてくるからな。


 「俺は自分の身が可愛いんでね」

 「いいじゃない、少しぐらい。話し相手になってちょうだい」


腕を引かれると、俺は無理やり座らされた。
仕方ない。せめて正座でもして、俺は関わりが無いことを少しでも見せておこう。


 「こたつといったら、足を布団の中に入れるものよ」

 「どんな状況になっても、俺は入れないさ」


頑固として足を崩さないと心に誓ってみたが、よくよく考えればこれでは後で逃げれない事に気づいた。
足がしびれて隊長の怒りをまともにくらうなんて格好悪い事も嫌だ。


 「もう!こたつは足を絡めあう絶好の場所なのよ?」

 「違うだろ、暖をとるためだろうが」


こいつの思考は本当に訳の分からない方向へ行くな。
何をされるか分かったもんじゃない。
俺は我慢して正座を続けることにした。


 「ねえ。入れてよ」

 「入れない」

 「入れてってば」

 「隊長の家でそんな事できるか」

 「それだけを楽しみにしてたのに」


珍しく乱菊が悲しそうな顔をする。
いや、俺はひっかからないぞ。これも罠だ。


 「体は暖まっても、心は寒いものね」


寂しげに空間を眺めている乱菊に俺は勝つことなんてできない。
ため息をつくと、渋々足をこたつの中へ入れた。
すると、こいつの声は先程までとは打って変わって明るい声に。


 「これで、も共犯」

 「俺を巻き込むなって言ってるだろ」

 「いいじゃない。楽しいでしょ、こういうのも」


本当に足を絡めてくる乱菊にはため息しかでてこない。
だがこいつが楽しそうに笑っているなら、と良しとしてしまう俺も馬鹿だ。


 「隊長の家ってのが嫌なんだよな」

 「気を使う必要なんてないわ」

 「不法侵入したお前に言われたくない」


俺、こいつとこのまま付き合っていったら常識人とはかけ離れてしまうんだろうな。
当たり前でない事を当たり前にやってみたり。
・・・なんか想像しただけで、恐ろしくなってきた。


暗い事を考えるのを止めよう。
机の上にあったみかんに手を伸ばし、皮をむいていれば乱菊があからさまに口を開いた。
まるで親鳥から餌をもらうのを待っている子鳥のように。


 「言わなきゃ分からない」

 「の意地悪。あたしにも頂戴」

 「ん」


手渡そうとすれば、乱菊はまた口を開いた。
手を使おうとはしないのか。
俺がみかんを持った手を伸ばすと、首を横に振った。


 「口移しでお願い」


どこまで自分勝手なんだか。
俺は手にしていたみかんを口に含むと、その手で乱菊に合図をした。
たまには自分から動いてみろといわんばかりに。


 「だったら、いらない」


すぐ断られてしまった俺はどうすればいいんだよ。
乱菊が口づけをしてくれなかったことにむくれていると、小さく笑う声が聞こえた。


 「言わなきゃ分からないわよ」

 「俺の台詞を奪うな」


結局、こいつの言いなりになるすべしかないのだろうか。
俺には黙々とみかんを食べ続けるしかできなかった。



 「


乱菊の方へ顔を向けた瞬間、口を塞がれた。
しばらく口内を舌でかき回された後、ゆっくりと彼女は俺から離れた。
口の中にあったはずのみかんが残っていない。


 「最後の、もらうわよ」

 「盗ってから言うな」



どうやら俺は乱菊には絶対に逆らう事はできないようだ。











-back stage-
管理:1万打フリー作品・乱菊編どす。
乱菊:随分と振り回されちゃってるわねぇ、ったら。
管理:君を制御できる人って少ないと思うんだよ。
乱菊:ま、失礼ね。私だっての為なら少しぐらい我慢できるわよ。
管理:(少しだけかい)てか、なんで隊長の家で勝手にイチャイチャしてるの?
乱菊:電気が通りそうなのは隊長格の家だけのような気がしたから。

2005.12.29

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