「あら、可愛い!」


現世に来たら、すぐこれだ。
乱菊には見えないように、ため息を吐く。
見つかりでもしたら、殴られること間違い無しだからな。


早速、呉服屋に入って現世の服を見て回ってる。
俺は既に持たされた複数の袋を置いて、休んでおいた。


 「ねえ、これとこれ。どっちの方が可愛い?」


二着を手にして、俺に聞いてくる。
そんなの分かる訳無いから、適当に答えた。


 「どっちも可愛いんじゃねえの」

 「真剣に答えなさいよ」


睨まれてしまい、慌てて機嫌をとる。


 「ど、どっちもお前に似合うから選べねえんだよ」

 「あら、そう?困ったわねえ、それなら両方買っちゃおうかしら」


危なかった。
冷や汗を拭いながら、乱菊が会計を済ませるのを待つ。
それが済めば、荷物持ちは俺の担当する。


 「悪いわね、持ってもらっちゃって」

 「もう諦めた」

 「何か言った?」

 「いや、乱菊が楽しいなら、それでいい」


さすがに両手が塞がるのは困るが。
苦笑すると、乱菊がするりと腰に腕を回して密着してくる。


正確には、その胸を押し付けてきてる。


 「楽しいわよ。だって、と一緒だもの」

 「・・・そうやって言いくるめられるんだよな、いつも」


分かってはいるけど、学べない。
俺が諦めたところで、乱菊は腕を引っ張ってきた。


 「それじゃ、デートの続きね。アクセサリーを見に行きましょう」

 「まだ買い物を続けるのか・・・一旦、荷物を置きに帰ろうぜ」


でなきゃ、荷物が場所をとって通行人の邪魔になりそうだ。


 「仕方ないわね・・・なら、お茶でも飲んでゆっくりしてからにしましょう」

 「まだ動き回るのかよ」


思わず出た本音に、乱菊が一発殴ってきた。













その後も、乱菊の買い物は続いた。
どうして女ってのは、こうも買い物好きなんだか。
結局、二度荷物を置いてから、俺たちは飲みに出かけていた。


 「あー、飲んだ、飲んだ!」

 「この酔っ払い・・・俺に寄りかかって歩くな」


現世での虚退治が終わってからの娯楽とはいえ、飲みすぎな乱菊を介抱する。
俺を頼りにしてくれてるのは分かるが、いつも加減しないことにはため息が出る。


 「ねえ、。公園で休んでいきましょう」

 「お前な・・・早く帰って休んだ方が、身のためだろ」

 「公園でも休めるでしょ!・・・というより、実は気分が悪くて・・・」

 「それを早く言え!」


豪快に飲んでいた乱菊を考えれば、確かに具合が悪くなっても可笑しくは無い。
普段は強いから酔いつぶれたり気分が悪くなったりしない彼女だったから、気づけなかった。
そっとベンチに座らせて、俺は近くの自動販売機に寄る。
適当に飲み物を買ってから、彼女の隣に座った。


 「ほら、これ飲め」

 「ありがとう・・・」


急に弱い姿を見せる乱菊の頭を優しく撫でる。
落ち着いたのか、彼女は俺の肩に頭を置いてきた。


 「ちょっと、はしゃぎ過ぎたかしら」

 「今更、何を言ってんだ」

 「そうね、を振り回して遊ぶのが当たり前なんだっけ」

 「それはそれで辛いけどな」


乱菊が俺の頬に手をそえて、唇を重ねる。
それに酔いしれていると、俺はいつのまにか押し倒される形になっていた。


 「嫌かしら?」

 「俺、今逃げてるように見える?」


その時、乱菊が見せた笑みに見惚れて、俺は心の中で思った。



 「誰より何より綺麗だ」














- back stage -

管理:受けな男主にすると、案外、タイトルに繋げるのが難しかったです。
乱菊:そうね、ちょっと無理矢理感が否めないわ。
管理:うーん。まだまだですね、修行不足です、表現力無さ過ぎる。
乱菊:そこまで批判するのに、人にあげるわけ?
管理:・・・えと、この作品は誰でも持ち帰り可能でーす!
乱菊:あからさまに逃げないの!
管理:ひええ、そこは皆様の豊かな想像力で補って・・・
乱菊:はい、ごちゃごちゃ言わないで、罰を受けましょうねえ。

2008.07.29

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