寸止め


町中を歩いていたルキアは、背後から何やら嫌な気配を感じた。


 「姐さーん!」


真直ぐに飛んできたコンの顔を足で止め、そのまま地面に踏み潰す。
しかし、敵は一人ではなかった。
誰かが、彼女を後ろから抱き締める。


 「囮作戦、大成功!」


嬉しそうに耳元で叫んだ彼に、ルキアは肘鉄を食らわせる。
痛みに耐え切れず、彼は彼女を解放する。
しかし、顔は笑っていた。


 「照れなくてもいいだろ、ルキア」

 「照れてなどおらぬ!あと、不用意に死神化するなと言っただろう!」

 「こうでもしなきゃ、抱き締められないだろ」

 「が抱き締めようとする事を断っているのが分からないのか」


便利だったんだけどな、瞬歩。
手元が淋しくなったは、そう思いながら両手を後頭部にまわす。
今だに死神の状態でいる彼に、ルキアはもう一度注意をした。


 「早く人間に戻れ。一緒に歩くぐらいなら、許してやる」

 「分かったよ。ルキアがそんなに俺と帰りたいなら、そうしよう」

 「違うと言うのに、この男は・・・」


彼女の苦労も知らないのか、人に戻ったは鼻歌を歌い始めた。


 「何故、貴様のような男に死神の能力があるんだ」


扱いが厄介だと嘆くルキアの気持ちは、の眠っていた能力を起こした原因に怒りを現した。


 「そういや、今日は黒崎と一緒じゃないんだな」

 「私だって、一人になりたい時がある」

 「俺と一緒になるために一人になってくれるとは、嬉しいぜ」

 「誰もそのような事、一言も言っておらぬ」


反論はしても、にそれが聞き入られることはない。
ルキアも相手にするのを止めれば良いものを、何故だか止めなかった。


 「安心しろよ、何があってもルキアを守るからさ」

 「話が繋がっていないぞ」

 「俺が言いたかったことを口にしただけだからな」


彼女に見せたとびきりの笑顔は、ルキアを黙らせるほど綺麗だった。
赤くなった顔を隠すように、ルキアはから目を背ける。

そんなルキアの手を取って、は立ち止まった。


 「誓いのキスもしなきゃな」


まさか、と顔を戻した時には、遅く。
は彼女の前に跪くと、手の甲にキスをした。
突然の出来事で、ルキアは固まる。


 「あ、これじゃ足りない?」

 「そ、そんなわけあるか、このたわけ者!」


の手を振り切って、歩き始める。
さすがにこれは効いたのか、は苦笑していた。


それを見ていられないと思えるほど、ルキアはに気を許していたようだ。
彼女はついてこようとしないに振り返り、声をかけた。


 「何をしている。私を守ると言った以上、傍にいてもらわなければ困るぞ」


ルキアの言葉で、に笑顔が戻る。
しかし、調子に乗って抱きつこうとした彼をまだ受け入れることはせず、ルキアは足で体が近づくのを止めさせた。










-back stage-

管理人:コンがどうなったかは、タイトルバーを読んでください(笑)
ルキア:そんな扱いでいいのか?
管理人:この話は、貴女を相手にしてるんだもん。仕方ないさ。
ルキア:ならば、最初から出さなければ良いだろう。
管理人:調子こいた主人公が書きたかったの。
ルキア:・・・結局、己の都合か。

2006.12.14

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