深々と雪が降る中この人は何をさせるのだろうと、は心の中でぼやいた。
ゆきだるま
尸魂界で雪が降るなんて、滅多にないこと。
そんな日に二番隊隊長と彼女の隊員の一人が外に出ていた。
「砕蜂さん、無理言わないでくださいよー」
「無理な事は言っていないだろう」
「十分、言ってることになりますって」
誰にも踏み荒らされていない雪原と化した庭へ足を踏み入れる。
寒くて上着を着込んでいるとは対照的に砕蜂は普段の格好で特別防寒対策をしていなかった。
空を見上げればまだ朝日が昇る気配は無い。
はっきりと顔を見ることのできない明るさの中、は砕蜂と会話を続けた。
「夜中に家におしかけてきたと思えば、いきなり鍛錬に付き合えだなんて」
「暗闇の中での訓練をつけていなかった事を思い出したのでな」
「実戦で経験してるから、構わないじゃないですか」
「気を抜いていたら、死ぬぞ」
暗くて助かったと、は思った。
でなければ今の彼女の目は殺気で恐ろしく感じただろう。
「死にませんよ。砕蜂さんが助けてくれます」
「それ以上ほざくようなら、竹刀ではなく斬魄刀に切り替えるが?」
彼女に殺されるかもしれないと考えたは、仕方なく竹刀を構えた。
実力からいって、が砕蜂に勝つことは無い。
いかに彼女の説教を黙らせることができる戦略をうつかが問題であった。
「眠いのに考えると、集中できませんよね」
「ぼやくな」
「砕蜂さーん」
「何だ」
「緊張感てのがなくって、やる気でません」
「ちゃんとやれ」
なかなか竹刀を動かそうとしないに砕蜂は苛立ち始めた。
「だって、せっかく雪が積もってるんですよ?」
「だから何だ」
「足跡残したり、雪だるま作ったりしましょう」
「断る」
いっその事、今手にしている竹刀で襲いかかろうかとも思考を巡らせる。
しかし砕蜂が行動に移す前にはしゃがみこんだ。
何をしているのかと見ていれば、雪を一生懸命集めている。
そして手にした雪を丸め始めた。
「。まさか作るのか?」
「朝早く起きたんだから、副隊長ほどの大きさの雪だるまができると思いません?」
大前田ほどの巨体を指すのはさすがに目標が高すぎると感じる。
その意見を口にしようかと砕蜂は思ったが、久しぶりに雪で遊ぶのも悪くないと思い手伝う事にした。
「できた!」
「できたな」
すっかり日は昇り、ちらほらと人々が動き始めた頃。
二人の嬉しそうな声が庭に広がった。
目の前にはどちらの背も追い越す巨大な雪だるま。
これだけ大きいと、誰も壊そうとはしないであろう程に威圧感を感じた。
「これにせんべいを持たせれば、完璧に副隊長ですね」
「ちゃんと食べこぼしをつけねばな」
そうですね、と微笑んだは急に身を縮めた。
「どうした?」
彼は、心配して声をかけた砕蜂に情けなさそうに答えた。
「さすがに手袋もせずに雪に触れたので、寒くて寒くて」
「してなくとも私は平気だ」
「砕蜂さんと僕の体質は違うんですよ、きっと」
さぁ中に入りましょうか、と先に行くの背をしばらく見つめた後、砕蜂は後ろから彼を抱きしめた。
驚いては足を止めた。
どう対応してよいのか分からずに慌てふためいていると、砕蜂は見えないところで小さく笑った。
「こうすれば、少しは暖まるだろう」
「ああ、はい・・・」
それだけの理由だったのかと残念でいれば、砕蜂もすぐに身を引いた。
名残惜しい気持ちを抱えつつ、気遣いへのお礼を言おうと振り向けば突然頬に暖かいものが触れた。
らしくない事をしてしまったと頬を赤く染めると、砕蜂はを置いて中へと入っていった。
がそれが何だったのかに気づいた時にはすでに雪だるまが解け始めていた頃だった。
-back stage-
管理:1万HITフリー夢・砕蜂編。
砕蜂:なんだか説明が多い話な気もするな。
管理:そうかなぁ。私は相変わらず貴女の口調が分からないの。
砕蜂:原作を調べろ。
管理:あ、あはは。今は友達がレンタル中でチェックしようがない。
砕蜂:貴様・・・やる気あるのか?
管理:あ、あ、ありますよぉぉ。
2005.12.29
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