「え〜、人には向き不向きがあってだな」
たつきが必死で冷静を装う。
しかし、予想外のことに心を落ち着かせることなどできなかった。
「慣れれば、問題ないだろ」
「だから、それが無理だって言ってんだよ!」
怒鳴られたが不満そうな顔をする。
彼は、たつきの手を握っているだけで怒られているのだ。
恋人ならば、まだ初期段階と認識される程度。
「この間は抱きついたら殴ってきたから、今度は手にしたのに」
拗ねたは腹いせにたつきを抱きしめる。
彼女は驚き、反射的に体を動かした。
「綺麗に決まったね、背負い投げ」
携帯をいじりながら、小島が解説する。
一部始終を見て笑っていた浅野もたつきに殴られて倒れた。
「だ、大体!があたしと・・・その・・・」
「たつき、顔真っ赤」
「うるさい!少しは黙ってろ!」
寝たままのを踏みつけ、彼女は誤魔化そうとする。
「俺が代わりに言ってやろうと思ったのに。俺たちが付き合う事になる前に・・・」
「あー!あー!それで十分だ!」
恥ずかしすぎて、その声はさらに大きくなる。
それでも忍耐強く周りが黙って聞いているのは、不思議な光景だ。
もっとも、聞いた振りでもしておかなければ、彼らの命が危ういのが原因である。
「そ、そん時は、まだもこういう事を平気でやるようなやつじゃなかっただろ」
「たつき。知ってるか?」
の真剣な眼差しに、たつきは黙り込む。
「人間、自分のやりたいように生きるのが一番だと、俺は悟ったんだ」
「・・・だから、なに?」
「だから、俺は自分の欲望に忠実に従うことに決めた!」
「そこで威張るな!」
たつきの肘がの頭を直撃する。
これは痛そうだ。
「でも、確かにって変わったよね」
小島が携帯をいじるのを止めず、たつきに同意した。
これには、他の者も頷く。
「恋は人を変えるものだって言ってたじゃん、小島も」
「おまえは変わりすぎだって言ってるんだよ」
たつきは、少し前のことを思い出す。
と付き合うまでは、よく彼女は女の子に免疫のないをからかって遊んでいた時のことを。
からかいすぎたら、告白されるという事態を招いたのだが。
「俺のこと、嫌いになった?」
寂しげな瞳にも慣れなくて、たつきが言葉を詰まらせる。
「す、少しは加減して欲しいってだけで・・・」
「そっか、良かった。それなら」
先ほどとは態度が180度変わり、たつきに抱きつく。
「これで許す!」
は笑顔を浮かべているが、たつきからは怒りのオーラが現れ始める。
周りは悟って、すでに避難していた。
「だから加減しろって言ってるだろー!」
盛大にをどつく音は、聞いてる者の方が痛みを感じると錯覚するほどであった。
- back stage -
管理人:たつきと純愛を目指したら、暴力的な彼女になってしまいました。
たつき:別にいいんじゃねえの?あたしが女っぽいのも変だろ。
管理人:それでいいのか、恋する乙女が・・・
たつき:乙女とか、気持ち悪いこと言うな。
管理人:もっと素直に生きた方がいいよ。余計なことだろうけど。
たつき:・・・だったら、そういう話でも書いてみたら?
管理人:難題をぶつけてくるな。この小説は光様のみ返品/持ち帰り可能です。
たつき:さらっと酷いこと言って終わるんじゃねえ!
2008.07.03
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