「彼は、今日からSOS団の一員となる・よ!」
高々と宣言したハルヒの横にいたのは、金髪に青い目をした男だった。
invisible man
「これが噂のSOS団か」
て、おい。確かに、ハルヒが関わっているというだけで噂にはなるだろうが、
ハルヒの喜びそうなコメントだけは、よしてくれ。
そんな意味で言ってなくても、こいつはポジティブにしかとらえないぞ。
「そこまで噂になってるなんて、あたしも有名になってきたわね」
ほら、浮かれてるじゃないか。頼むから、これ以上何か言うなよ。
・という男は、部室の奥をじっと見つめている。
何を見てるのかと振り向けば、今日もメイド姿をした愛らしい朝比奈さんがいた。
もしや、こいつ朝比奈さん目当てか?
「君!君もこの部活に入るの?」
「涼宮ハルヒに逆らいようがないから、そうかもな」
何だ、何だ。こいつは朝比奈さんの知り合いなのか?
「自分も未来人です」とかいうオチだけは、勘弁してくれ。
「そういや、みくるはと同じクラスだっけ」
「ああ、席が隣なんだ」
よかった、クラスメートか。
一安心して彼に俺の名を伝えようとすれば、またしてもハルヒに邪魔される。
俺は、一体いつ自分の本名を名乗りあげられるんだ。
「これがキョン。あっちの端に座ってるのが、有希ね」
ついでに長門の紹介をする。
長門は、一瞬だけ顔をあげて、また本に視線を戻した。
相変わらずな反応だな、おい。
顔を上げただけでもマシな方か?
「古泉ってヤツは、いないのか?」
ちょっと待て。上級生が何故、下級生のアイツを知っている。
いくら転校生だからって、男が注目するはずないだろう。
「アイツなら、いつも遅れて・・・」
「おや。新しい部員ですか?」
来た。こっちも相変わらず笑みを崩さないで、部室に入ってくる。
ハルヒは嬉しそうにそれに答えた。
「・よ!あなたの新しい部下を可愛がってちょうだい」
「分かりました」
古泉は、俺に向かってウインクをする。
だから、別に羨ましくもなんとも思わねぇから、それを止めろ。
「さ、新入部員も紹介したことだし。みくるちゃん、着替えるわよ」
「はいぃ?」
「だから、着替えるの!また新しい服を見つけてきたからね。今日はコレを着なさい」
逃げようとする朝比奈さんを捕まえて、衣類を手にしている。
今度は、何を着せるつもりなんだろうな?
朝比奈さんは、目を潤せて俺に助けを求めるが、申し訳ない。
俺にはハルヒを止めようがないし、次のコスプレも楽しみにしているわけで。
せめて着替え中は部室から出て行こうと、古泉と共にドアの向こう側へと移った。
「おや、新入部員が居ませんね」
「本当だ。どこ行ったんだ、あの人?」
こいつに指摘されるまで気付かなかったが、辺りを見渡しても見当たらない。
だが、部室の中からは楽しそうなハルヒと、抵抗しようと足掻いている朝比奈さんの可愛い声しか聞こえない。
そこでその様子を見ているわけではなさそうだ。
「どうでしょうね。彼なら、見てるかもしれませんよ」
「は?どうやって見るんだよ」
「さあ、それは僕にも分かりませんが」
何だか、その笑みに裏が隠されてるようでならない。
あのって男も、やはりハルヒに関係するんだろうか。
後で会えば、聞いておこう。
ハルヒからの入室の許可をもらい、部室へ入る。
今度はどのような衣装なのかと思えば、朝比奈さんは真っ黒のレースの服を着ていた。
いわゆる、ゴスロリというタイプの服のようだ。
彼女の胸が、服で押し潰されて辛そうだ。
しかし、下のスカートはまたしても丈が短く、白く艶やかな太ももが綺麗に現れている。
「うーん。ゴスロリは、有希の方が似合うかしらね」
ハルヒはあまり満足がいかないのか、唸り続ける。
まあ、朝比奈さんにゴスロリが似合わないのは、俺も分かる。
彼女は可憐なゆえに、きっとメイド以外の黒い服は似合いにくいのだろう。
どっちかというと、ゴスロリの白いヴァージョンの方が良いんじゃないか?
フリルが似合うのは、絶対だからな。
「ま、いいわ。写真を撮るわよ」
俺にカメラが回ってくるのかと思って手を伸ばせば、ハルヒは別の人物にカメラを渡していた。
それを目で追えば、いつのまに居たのか、・が受け取っている。
「俺が撮っていいの?」
「団長命令だもの、当たり前でしょう」
俺はどうすればいいんだ。
阿呆みたいに突っ立ってると、ハルヒは俺に別の用事を言いつけた。
「あんたは、あたし達全員分の飲み物を買ってきなさい」
「金は?」
「それぐらい、自分で払いなさいよ」
また俺の奢りか。これは、何の罰ゲームだと思えばいいんだか。
五人分の缶ジュースを腕に抱えて部室に向かう途中で、新入部員が現れた。
「俺の正体、知りたい?」
「またハルヒに関することですか」
「あ、別に敬語でなくていいぜ」
では、その厚意に甘えよう。
手っ取り早く話を終わらせるために、まずはこの質問でもするか。
「お前にとって、ハルヒはどんな存在なんだ」
「そっから聞くのかよ。俺の正体、知りたくないわけ?」
「そんなの、あとでも聞けるだろ」
つまんねぇな、と文句たれるを俺は即す。
でないと、こっちは後でハルヒに怒鳴られるんだよ。
それと、俺が五本もジュースを持ってるんだから少しぐらい手伝おうとは思わないか、こいつは。
「俺らにとって、涼宮ハルヒは死神だ」
「死神とは、また随分と恐れられてるんだな」
「恐れているからな」
ハルヒが死神ね。
考え方としては、朝比奈さんや古泉と同じと捉えていいのだろうか。
アイツが何かすれば、こいつの世界も崩れると。
「俺さ、生まれはアメリカのお化けの世界なのよ」
お化け?アメリカのお化けって言ったら、吸血鬼とかフランケンシュタインとかか?
「そうだな。日本語としての『お化け』には当てはまらないけど、そういうのだ」
「そういう世界が本当にあるのか」
「証拠なら見せれる」
そう言うなり、は右手の手のひらを俺に見せる。
何か変な力でも俺に注ぎ込むんじゃないだろうな?
不安になっていると、その手は俺に何もせず消えた。
・・・消えた?
「俺の正体は、透明人間」
の顔を見ようとしたが、首から上にあるはずの顔が見当たらない。
恐る恐るその空間へ手を伸ばしてみると、何も感触が得られなかった。
驚きながらも手を引っ込むと、の口だけが再び現れた。
「部分的に体を消すこともできるんだ」
「分かった。証明は、十分だ。だから、早く元に戻れ」
「透明である事が、俺の元の姿なんだけどな」
金髪に青い目がついた顔が帰ってきて、ほっとする。
服は消えていないのに、顔が消えてるところを他の生徒に見られたら危ないだろうが。
「俺は、透明人間だ。つまり、元々は体が見えないはずの体質を持っていた」
「それが、ハルヒによって変わったというのか」
「ああ。涼宮ハルヒが、俺達に何らかの呪いをかけたと信じている。吸血鬼が昼に出かけられるのは異常だろ?」
ということは、その吸血鬼はニンニクや十字架も平気になったのか。
綺麗な女の血を求めて夜に出回る必要がなくなったのか。
「そう。だから、俺が代表して呪いを解く方法を探しに来たんだ。世界の秩序を取り戻すためにな」
そんな状態なら、アイツを死神呼ばわりしても当たり前だな。
一つの世界を狂わせているんだから。
ん?ちょっと待て。
そうすると、さっき部室から出て行った時は自分の姿を消したということなのか?
「あ?ああ、部屋から出るのが面倒だったから、姿を消したんだ」
「なるほどな・・・で、済むか!」
抱えていた缶ジュースが落ちることなど気にせず、の頭を殴る。
痛そうに頭をさするが、自業自得だ。
こいつは、俺だって見たくて仕方のなかった光景を見る事ができたのだからな。
「お前も朝比奈さんを知ってるなら、分かるだろう。覗き見なんてするな」
「堂々と見てたぞ」
「姿を隠してたら、同じことだ!もう二度とするなよ」
「可愛かったんだけどな、朝比奈の泣いてされるがままだった光景は」
羨ましいから、これ以上その事を口にしないでくれ。
と共に部室に戻れば、ハルヒがいなくなっていた。
インスピレーションが無くなる前に行動をすると言って、帰ったそうだ。
何を見て、何を思ったんだろうな。知りたい気は、全く無いが。
アイツが帰ったのを見届けると、古泉も帰ったらしい。
それを伝えてくれた朝比奈さんもすでに制服に着替えており、お疲れ様でしたと笑顔で帰っていった。
どうか、今日もハルヒのいない家でくつろいでください。
そんなわけで、部室には俺と長門との三人が残った。
て、いきなりの姿が見当たらないぞ。
ここは、宇宙人の力を借りるか。
「長門。がどこに行ったかとか分かるか?」
「空間情報に異変有り」
「その異変は、どこだ?」
「そこ」
顔も上げずに俺の右隣を指す。
さっきまで、隣にいたはずの場所だ。
意味があって消えてるのか、俺をおちょくって楽しんでるのか、どっちなんだよ?
「どうして消えてる?」
「ん〜。照れ隠し」
「は?」
分からん。もう相手をするのも疲れた。
俺も帰ろうと長門に目をやると、彼女は俺の右の方を見ていた。
「どうした、長門?」
「強制的に現せる」
「あ、それ卑怯だぞ、長門!」
そういう事か。
見えないを見えるように情報を操作するつもりらしい。
そんな事できるのかも知らんが、長門なら可能のような気がする。
まぁ、だが無理にそれをしてもらう必要は無いので断っておいた。
「違う。私がしたいだけ」
「何かあったのか?」
「・・・・・・」
初めて長門が頬を赤らめたのを見た。
そんな顔もできるのかと関心してる場合じゃないが。
見えないに向かって聞いてみる。
「お前、何やったんだ?」
「さ、さぁね?」
声だけでも、焦ってる様子が伺える。
あの長門が恥かしがるぐらいだ、きっとロクでもないことだ。
そこまで成敗したいのなら、俺は止めないでおこう。
「ほどほどにしとけよ、長門」
頷いてはいないが、とりあえず俺の言葉は聞こえてるはずだ。
俺は、部室に二人を残して帰宅した。
次の日、は部室に現れなかった。
何でも今日は欠席だったらしい。
長門に昨日何があったのか聞いてみたが、結局最後まで口を開くことは無かった。
-back stage-
管理人:書いてみました、ハルヒ夢!無駄に長いです。
キョン:で、何で俺がここに出なきゃならないんだ?
管理人:他の人じゃコントロールがきかないから。
キョン:こういう時は、と一番仲良さげな長門がいいんじゃないのか?
管理人:一応オールギャグだから平気なんだけど・・・どう、長門さん。
長門:・・・・・・・・・。
管理人:やっぱ、無理じゃない?
キョン:みたいだな。これじゃ、二人の間に何があったか聞けないままだが。
長門:安直な作品名。
管理人:う、うっさい!!
2006.08.06
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