絶対的存在




 「パン特売?」


部室で雑誌を読むハルヒの肩越しに、が声をかける。
パッと目に入った文字を読み上げたらしい。
しかし、ハルヒは怪訝そうな顔で答えた。


 「特集よ、特集。なに主婦みたいな反応してるわけ?」


第一、雑誌に特売の宣伝が載るわけ無いじゃない。
飽きたのか、ハルヒは雑誌を畳む。
その表紙にある見出しをは読み上げた。


 「オバケ特集・・・」

 「あら、今度は特売じゃないの」


明らかに馬鹿にした言い方で、ハルヒが突っかかってくる。
それを無視して、は質問をした。


 「涼宮は、お化けを信じるか?」

 「いたら面白いとは思うけど、迷惑はかけないで欲しいわね」

 「あくまで、自分の身が大切なんだな」

 「当たり前でしょ」


そういえば、あんたはアメリカの人だっけ。
思い出したハルヒが、西洋のモンスターについて話し始めた。
それを適当に流していると、話は彼女の不満へと繋がっていく。


 「第一、フランケンシュタインの首のネジとか意味分からないのよね。可笑しすぎるわ」

 「それ、本人に会った時に言うなよ」

 「なんでよ」

 「本人が一番気にしてる・・・と思う」


まさか自分の友達だとは言えず、は付け加える。
ハルヒは何の疑問もなく同意した。


 「センス無さすぎだものね。私なら大砲でも付けるわ」

 「無理だろ、そりゃ」

 「気に入らないものは、何でもすぐにぶっ飛ばせて良いじゃない」


彼女の言う事があまり理解できず、首を傾げる。
これ以上、話をする気の無いハルヒは、に雑誌を片付けるよう言いつける。
それを行った彼を見て、彼女は他にも命令した。


 「ちょっと、。宿題を代わりにやってくれない?」

 「はいはい」


国語以外ならね。
特に嫌がらない彼に驚いたハルヒは、それを止めた。


 「どうして、あたしの言うこと全て実行しちゃうのよ」

 「宿題、自分でしたかった?」

 「そういうことじゃなくて」


自分でしなければならない事であるのは置いておき、彼女は寂しげに呟いた。


 「あたしの僕みたいじゃない」

 「まあ、ハルヒは俺にとっちゃ、神同然だしな」

 「なにそれ?意味分からないわよ」


神と言われれば喜ぶかと思ったが聞き返す。


 「説明してほしい?」

 「そうね、お願いするわ」


事実を述べたところで、彼女が信用するとは思えない。
遊び話として、彼は身の上話をした。


 「俺はフランケンシュタインとかと似たオバケで、涼宮はそのオバケらの神様」

 「それって、神様というより死神じゃない」


吸血鬼やゾンビに神様がいるとは思えないわ。
最もなことを言われて、は黙り込む。


 「ていうより、よくそんな作り話を考えられるわね」

 「涼宮は俺にとって絶対的存在であることは事実だからな」

 「ふうん、口説きにしちゃイマイチね」

 「口説きだと思ってくれたってことは、俺を意識してくれてるんだ」


顔を近づかせれば、ハルヒが顔を真っ赤にして平手打ちを食らわせる。
膨れる頬をさすりながら、は謝った。
だが、ハルヒの機嫌は良くならない。


 「機嫌直せよ」

 「なんで、神様のあたしが、の言うことを聞かなきゃならないのよ」

 「怒りを静めさせるためにも、お詫びをしなきゃならないなら・・・」


ハルヒの顔を手で包み込み、彼女の唇にキスをする。


 「これで良い?それとも、もっと欲しい?」


不敵な笑みを浮かべた相手を見て、ハルヒが悔しそうにする。
彼は、最初からこれを狙っていたのだ。


 「なんて、知らない!」


怒ったハルヒが、の胸倉を掴んで近づかせる。
今度は、彼女からキスをした。


 「言ってる事と、やってる事が違うけど?」

 「あんたは、あたしの言うことを聞いてればいいの」

 「じゃあ、次は何をすればいい?」



その答えが出るまで、は笑って待っていた。














-back stage-

管理人:「invisible man」の主人公で書いたハルヒ夢です。
ハルヒ:これ、何を目指してたわけ?
管理人:突発的に書きたくなっただけです。
ハルヒ:あたしを書くっていうのに、ちゃんと考えなかったわけ?
管理人:考えて頑張って繋げたさ!自分の体験談と。
ハルヒ:もしかして、最初の特売ってやつ・・・
管理人:電車の中で「パン特」まで文字を書いてた人のを見てて思ったの。
ハルヒ:馬鹿じゃないの?

2007.04.29

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