「なあなあ、ハルヒ」
「なによ、しつこいわね」
しつこい、と言われてしまうと、気が引ける。
唸って何も言わないでいると、ハルヒが頭を叩いてきた。
「早く言いなさいよ、このバカ」
「いったいな・・・そこまで強く叩かなくてもいいだろ」
日誌を書いていたのに、今ので字が歪んだ。
消しゴムを動かしていると、本当に苛立ったハルヒがこっちを睨んでいた。
「がはっきり言わないからでしょ。で、なに?」
口を開いてみるが、やっぱり言えない。
焦らすな、と怒鳴られた。
言い出した自分が言うのもなんだけど、絶対にハルヒは気にしない問題だ。
「お前さ、最近、部活に励んでるよな」
こっちは勇気を振り絞って言ってるのに、ハルヒは何とも思っていない。
「そうね。言われてみれば、と過ごす時間は減ってるかも」
中学から親しくしてるおかげか、俺の言いたいことは伝わっていたらしい。
だけど、その目は早く終わらせろと語っていた。
「なにやってるんだ、その部活で?」
「ってば、私と付き合いが長い割には、知らなかったわけ?」
「宇宙人とかと友達になろうってことくらいしか」
それは高校に入る前に聞かされてはいたから、知っている。
実際にどんなことをしているかまでは知らない。
なにせ、俺がその活動に参加することを許可されないからだ。
「たとえば、休みの日にも皆で集まって、この世の不思議を探したり・・・」
意気揚々と喋りだしたハルヒの口は止まらない。
喋ってる間に日誌を書くのを終えたから、ハルヒが早く行きたがっていた部活にだって行けるのに。
「それで、火星人って、結構がめついと思うんだけど・・・」
話は、すっかり活動のことから逸れてる。
それを忍耐強く聞いて相手するのは、俺の役目だったはずだ。
だというのに、今はどうだろう。
その活動に参加してる仲間が、今のハルヒの話し相手になっている。
教室にいる時だって、ハルヒは俺じゃなくてキョンとしか話そうとしない。
たまに俺と喋ったとしても、連絡事項とかで、大した用事じゃなかった。
そんなに楽しいのか?
高校に入って、自分の行動についてきてくれる仲間が増えて。
俺は、その仲間じゃなかったのか?その仲間になれないのか?
「なぁ、ハルヒ」
楽しげに話すハルヒを止めてみる。
邪魔されたことが不快そうであったが、一応聞く耳を持ってくれた。
それは、やっぱり俺もハルヒに認めてもらえてるからじゃないのか?
「どうして、そのSOS団を作ったとき、俺に声をかけなかったんだ?」
俺がそんなことを聞くのが意外だったのか、返事が返ってくるまでに間があった。
その目は嘘を吐いていなかった。
「あんたがいたら邪魔になるからよ」
活動に支障が出るなら、確かに俺は必要とされないのかもしれない。
そこで、どうして邪魔になるのか、とか聞かない俺は本当に情けないくらいに臆病者だ。
「日誌、書いたんだったら、私が先生に出してくるわ」
「よろしく頼む・・・お前の今の仲間達にも」
久しぶりに会話したせいか、ハルヒの姿が消えた途端、寂しさが襲ってくる。
なんだか、視界がぼやけてきた。
「構ってよ、寂しいだろ」
中学の時、独りだったのはハルヒじゃない。
誰にも相手にされない自分だった。
だから、羨ましいんだ、ハルヒに仲間ができて。
だから、悔しいんだ、ハルヒが他の人に取られて。
「どうして、俺がいたら邪魔なんだろう」
俺みたいな孤独な人間には相応しくないってことなのか?
そんなこと、今更考えたって、答えてくれる人はいない。
そう思ってた。
「そんなの、決まってるでしょ」
楽しみにしている活動に行ったはずのハルヒが、ここにいる。
呆然としてると、デコピンをくらった。
「ったく、あんな寂しそうな声で独り言を口にするなんて、卑怯よ」
怒ってはいるけど、責めてはいないようだ。
そんなに大きな独り言だったのだろうか。
「私がを活動に入れないのは、を独り占めにするためだからに決まってるでしょ」
他の人と仲良くするなんて、許さないんだから。
ふてくされた顔をする時のハルヒは、照れ隠しをしている時だ。
ホッとしたら、笑えてきた。
「だったら、俺も活動に参加させてよ。もっと構って欲しいし、ハルヒを独り占めにするから」
調子に乗りすぎたか、と言ってから思った。
ハルヒは答えずに出て行く。
今度は怒らせてしまったかと落ち込めば、声がかかる。
「何やってるのよ、バカ。さっさと行くわよ」
そして、俺はまた彼女の仲間に入れてもらえた。
- back stage -
管理人:最初の予定と内容が変わっちゃったー!
ハルヒ:どうするつもりだったのよ?
管理人:切なめ<甘め、にする予定だった・・・
ハルヒ:思いっきり、切なめ>甘め、な内容になってるじゃない。
管理人:えーん、だってタイトルが微妙な境目なんだもん!
ハルヒ:それであんたは、自分が好きな方を取ったわけね。
管理人:す、すみません・・・お気に召さなければ、書き直します。
ハルヒ:この作品は、サイト以外が持ち帰ったり返品したりしたら駄目なんだからね!
2008.05.26
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