身長差
「本当に、ここら辺で落としたんですか?」
自分のズボンのポケット。
そこに、ヒナタさんの探している物が入っていることを隠して、俺はヒナタさんに訊ねた。
なかなか見つからないことから自信を失くし始めたのか、彼女は弱々しく頷く。
「他の所は、もう手伝ってもらって探してもらったから・・・」
「分かりました、もう一度だけ街の中を回ってみましょうか」
無理に自分に付きあわせてしまっている。
そんなオーラを出されたら、こっちの良心が少し痛んだ。
だけど、まだ別れたくなくて、ポケットに手を伸ばさない俺。
「ところで、その失くした鍵というのは、何の鍵なんですか?」
聞いてはいけないことだったか?
顔が真っ赤になって慌てふためく彼女も可愛らしい。
しばらくすると、小さな声が聞こえた。
「その・・・日記の鍵、なんです」
へえ、日記の鍵。
それは、無くては駄目なんだろうか。
「鍵が閉まってては、日記が書けないってことですか?」
「そうじゃないんです。開けたままにしてあるから、中身が見られちゃう可能性が・・・」
きっと、赤裸々に自分の想いを綴ってるんだろうな。
そうでなきゃ、ここまで必死に探そうとしない。
こっそりと見てみたいけど、それは難しそうだ。
「忍である家族がいたら、鍵が無くても見られる可能性があるんじゃないんですか?」
「君の言うとおりかもしれないけど・・・私の気持ちが落ち着くの」
すっかり俺に心を開いてくれたらしく、ヒナタさんの言葉に敬語が無い。
慌てて訂正しようとした彼女に自由に喋るように伝えて、俺も敬語を使わないことにした。
「じゃあ、絶対に鍵を見つけなきゃ、だな」
「い、いいよ、君。もう十分に助けてくれたし、これぐらいで・・・」
「まだ回り終わってないのに、帰れるわけないだろ。絶対に鍵を見つけるから」
自分が鍵を持ってるのを隠して、頼りになる男を演出する。
そんなことまでしないと、俺はヒナタさんに近づけない気がした。
だって、相手は忍だ。
何の変哲も無い俺とは違う、特別な人なんだ。
でも、鍵がこのポケットに入ってるんだから、人に聞いて回ったって、答えは出ないに決まってる。
また一周し終わっても、見つからずにいた。
ヒナタさんは、疲れ顔になっている。
もう諦めそうになっていた。
限界、だろうか。
ここまで追い込んでしまったのは、俺自身。
「ヒナタさん」
俺の声を耳にしたヒナタさんが、見上げてくる。
物理的だけじゃなくて、精神的にも彼女にとって、俺は見上げられる男になれるかな。
「俺に・・・チャンスをくれない?」
彼女の心の扉を開くことはできるだろうか、この鍵で。
探し物を手伝ったことで近づけた距離以上に傍によることを許してください、お願いします。
ポケットに突っ込んだ手は、小さな金属の塊に触れる。
それを思い切って、彼女に突き出した。
-back stage-
管理人:また中途半端な感じで終わらせちゃったぜ。
ヒナタ:えっと、この話の目的は?
管理人:君が彼の名を呼ぶこと!
ヒナタ:・・・そ、それだけ?
管理人:おうよ。
ヒナタ:だから、こんなに短いんですね。
管理人:うぐぅっ。
2007.05.08
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