床に何かが光るのを見てかがむと、そこには小さな鍵。





こんなところに





どうして一楽の店の前にこんな物が落ちてんだか。
不思議ではあったけど、捨てる気にもならなくてズボンのポケットに突っ込んだ。


 「おっちゃん、ラーメンよろしく」

 「はいよ!」


俺の声を聞くだけで、一楽のおっちゃんはラーメンを作り始める。
その間、俺はいつもの席に腰を下ろして、店の外を眺める。



もうそろそろ来るよな。



同じ曜日に同じ時間で同じ席と同じラーメン。
ただ一人の為だけにしている行動だ。


 「はい、お待ち!」


おっちゃんからラーメンを受け取り、麺をすすっていると目的の人物が現れた。



よかった、今日も会えた。



滅多に会えないわけではないが、彼女も立派な忍の一人。
任務で出かけてたら、この道の前を通らないこともある。



ヒナタさん。



だけど、今日は普段とは違うようだ。
同じ道を行き来しては、困り果てたように俯いている。



今日は勇気を出してみようか。



一気にラーメンを食べつくすと、お金を置いて出て行こうとした。


 「がんばれよ、ボウズ。」


・・・どうやら、おっちゃんには俺がこの店に通っていた理由がバレバレだったようだ。





 「どうしたんですか」


未だにうなだれたまま黙っているヒナタさんに声をかけてみる。
突然声をかけられた事に驚いたのか、ヒナタさんは少しばかり頬を染めて答えてくれた。


 「あ、あの。落し物をしちゃって」

 「落し物・・・ですか。何を落としたんです?」

 「鍵なんです。小さい、これくらいの鍵を」


自分の指で鍵の大きさを表してくれた。



鍵、といえば先程、俺が拾った物がある。
大きさも彼女が示す程度はずだ。


 「ここら辺で落としたのは、確かなんですか?」

 「・・・多分」

 「何時、落としたと気づいたんです?」

 「今朝です。朝、起きた時に無いことを気づいて」



今、ここで俺がポケットから鍵を出せば、ヒナタさんは喜ぶだろうに。
手をポケットにつっこみ、鍵に軽く触れてみる。



 「だったら、一緒に探しますよ」

 「え?」



今、ここで俺がポケットから鍵を出せば、ヒナタさんは喜ぶだろうに。
ポケットにつっこんだ手をゆっくりと抜き出す。



 「探し物をする時は、人数が多い方が良いんですよ?」

 「そ、そんな!迷惑かけられません」



今、ここで俺がポケットから鍵を出せば、ヒナタさんは喜ぶだろうに。
初めて会話ができただけじゃ足らずに、もっと一緒にいたいと思ってしまった。



 「良いの。俺が助けたいと思ったんだから。ね、ヒナタさん」

 「・・・どうして私の名前を?」



さて、後は何時この鍵を出すかの問題だ。



 「ずっと貴女の事だけを見ていたんですよ」



一気に白い肌が真っ赤に染まる貴女を何時まで独り占めしていようか。










-back stage-

ヒナタ:え、これで・・・おしまいですか?
管理人:うん。
ヒナタ:で、でも、君の名前すら読んで・・・
管理人:ないね。
ヒナタ:・・・呼びたかったなぁ、名前・・・
管理人:リクエストがあればね。

2005.09.25

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