「何で、若いのは、こうも元気なんだか」


肩を解そうと、腕を回す。
涼宮ハルヒを監視すべく、彼――――は、彼女の通う高校に潜入していた。
当然、自分の素性を隠して。


 「それとも、俺が体力無さすぎなだけか?」


年寄りくさい独り言に、誰も返さない。
は廊下を渡って、とある教室に向かおうとしていた。
同じく未来人である朝比奈みくると話をするためだ。
何も変わりはないだろうけど、一応報告を聞いておかなければならない。
彼女にとって、は上司であると思われていた。


 「え、本当ですか?」


ふいに朝比奈みくるの声が聞こえて、は顔を上げた。
しかし、出そうとした声を抑えて、とっさに身を隠す。


 「本当ですよ。なんなら、他のやつらにも聞いてみますか?」


彼女と親しげに話していた、キョン。
は歯を食いしばった。
どれだけ時間が経っても、彼はキョンを好きにはなれなかった。



涼宮ハルヒに関して、重要人物であるキョン。
彼に関わらないようにすることは不可能であるというのは、も承知していた。


だが、無理なのだ。
自分の存在すべき時間では恋人である朝比奈みくるが、他の男と親しげにしていることを見るのが。


もし、彼女が涼宮ハルヒに遠慮せず、キョンと付き合いでもしたら。
そんな過去がないからこそ、自分と付き合っているというのに。
は、不安で仕方なかった。


 「少しくらい、良いよな」


過去に影響を与えてはならないのが、未来人の鉄則。
そんなことは分かっていた。
は、丸めた紙を握る。


本当なら石を投げつけたいところだ、と嫉妬心を隠そうともせずに思う。
キョン目がけて、紙のボールを投げつけようとしたその腕は、柔らかい感触に阻まれた。


 「な、何やってるんですか!」


未来で、と付き合ってる、朝比奈みくる。
近くでキョンと話している彼女よりも大人である。
の方が背が高いため、ぶらさがるような格好で、の腕に抱きついていた。


 「軽く痛めつけようとしてる」

 「駄目です、過去をいじったら!」

 「俺達が干渉してる時点で、十分いじってるだろ」


高校生の朝比奈みくるに、大人の朝比奈みくるは会わせられない。
彼らは、小声で話を続けた。


 「大したこと無いだろ?誰かの悪戯ってことで終わるって」

 「とにかく、駄目です!」


握っていたものを取りあげられ、彼は諦めるしかない。


 「つまんねえの」

 「・・・そこまで、邪魔したいんですか?」


真剣な顔つきの彼女に、の機嫌は悪くなる。
まるで、キョンを庇っているようで、気に食わなかった。


 「お前、キョンのこと。今でも好きなの?」

 「え。ち、違います」


しかし、昔は少なからず思っていたのだろう。
慌てた様子の朝比奈みくるを見て、彼はさらに怪訝そうにする。


 「だから、違うって言ってるのに」

 「へー。だったら、今の間は何だったんだ」

 「そ、それは、君が可笑しなことを言うからビックリしただけで。そもそも、君が・・・」


喧嘩をし始めた二人が気づく頃には、周りの視線を浴びている。
目だった行動をとってしまったことから逃れるため、一度、人の居ない場所にまで移動した。


 「騒がれたら、大変なことになったな」

 「あ、あたしが悪いって言うんですか」


また始まってしまう喧嘩が、お互いに嫌になる。
重苦しい空気の中、は大げさにため息を吐いた。


 「ああ、はいはい。分かった、分かった」

 「何をですか」


 「つまりは俺が悪いんだろ?」


つまりは、逆ギレである。


 「そ、そんな言い方!」


傷ついた彼女が泣きそうになるのも構わず、彼は彼女の体を力強く抱きしめた。
朝比奈みくるの耳元で言い辛そうなの声が、彼女の心を満たす。


 「嫉妬だよ。悪かったな」















-back stage-

管理人:大人版のみくるってさ。
みくる:はい?
管理人:声が無いと、高校生のみくると変わらないことに気づいた。
みくる:そ、それは・・・。
管理人:どうしてだろうねえ。
みくる:な、中身が変わってないとか言うんですか?
管理人:この作品はお気に召された方々のみ、持ち帰り/返品可能です♪
みくる:それは肯定ってことですかぁ!?

2007.12.22

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