「そんなに泣いたら干からびちゃうよ」
色々な意味で名が知られている、アッシュフォード家。
その家に女として生まれてしまった私に、は声をかけてきた。
自由に自分が思うままに生きられないのだと分かっていたはずだ。
だけど、分かることは痛感するのとは違う。
それが理解できた時、子供ながらに私は大人に気を遣って、陰で泣いていた。
「干からびて死ねるなら、私はそれを選ぶわ」
あの頃、既に自分には可愛いげがなかったわね。
隠れていたつもりだったのに見つかったから、素直になれなかった可能性もあるけど。
親の付き添いで私の家に遊びに来ていたと思われる彼が、口を開いた。
「死ねるかは、分からないけど」
まともに受け止めるとは思わなかったのか、困った顔をしていたは表情を変えた。
「どうせ死ぬなら、楽しかった!て叫びながら死にたくない?」
「ミーレーイーさん!」
過去に飛んでいた意識を取り戻される。
あれから、ずっと私の近くにいてくれるだった。
昔は、可愛らしい顔で私の心の支えとなってくれてたというのに。
数年前に比べたら、確かに女の子が騒ぐくらい格好良くなったと思う。
私に相応しいか、と考えるなら、まだまだね。
「え、なに?」
「珍しいね、ボーッとしちゃって」
「私だって、考え込む時はあるのよ」
昼休みだからか、生徒会室には私達二人しかいない。
食後のデザートを差し出してくれたは、聞いてきた。
「何を考えてたわけ?」
「私達の出会いって、どんなものだった?」
唐突な質問に動じず、は少し考え込む。
予想していた答えが返ってきた。
「どんなのだっけ」
「大方、大人の事情で顔を合わせただけよね」
それからしばらく経った後、隠れていた私をが見つけて、慰められた。
私にはその時からしか、彼との記憶がなかった。
「ああ、それである日、ミレイが泣いてるのを見つけたんだっけ」
「そういう恥ずかしいことは、忘れて」
「忘れようがないよ」
どうしてか笑う、が少し腹立たしい。
「あの時の君は、放っておけないほど可愛かったから」
昔と比べると、口が軽くなったかもしれない。
「なんだか、泣きたくなってきたわ」
「愛されてることが幸せで?」
「まさか!」
今の私には、大人に決められた婚約者がいる。
今のよりも、地位も実力もある男。
だけど、私はがいい男になろうとしてるのを知ってる。
私に見合った――ううん、大人が認めてくれる男になろうと頑張っている。
だから、彼からもらった指輪を見せて言ってあげた。
「幸せすぎて、死んでも後悔しないようにしてくれるんでしょう?」
私だって、どうせなら笑って死にたい。
の言うとおり、楽しかったと叫んで死んでみたい。
きっと、それがミレイ・アッシュフォードらしいと周りも笑ってくれるだろうから。
「そんなことまで、言ったつもりはなかったんだけどな」
「この私を愛するってことは、そういうことだと分かっていたはずよ?」
いつもの調子が出てくる。
これも、が私の傍にいてくれるおかげ。
困ったの顔が、昔の彼を思い出させて、勝手に私の頬が緩んだ。
-back stage-
管理人:ミレイ、大好きだー!
ミレイ:何いきなり変なこと叫んでるの。あとがきでしょう、一応。
管理人:えー。他に言うこと、無いもん。
ミレイ:・・・何なのよ、それ。
管理人:この話って、すんなり浮かんだから、特に付け加えて言う必要なくてさ。
ミレイ:それほど想像しやすかったってわけ?生意気な私が。
管理人:い、いえ、可愛いじゃないですか、素直になれない子だなんて・・・
ミレイ:誤魔化したって、そうはいかないわよ?
管理人:この作品は、誰でも持ち帰り/返品可能ですー!
2007.12.26
ブラウザでお戻りくださいませ