「聞いてくれよ、長門!」
午前6時半。
他人の家を訪れるには、まだ早い時間。
にも関わらず、長門は俺を迎えてくれた。
事務的に俺に茶を出してくれる長門は、すでに制服を着ていた。
いや、違うか。
着替えてないだけだ。
きっと、こいつの便利な力のおかげで、洗濯しなくても綺麗なままなんだろうな。
どんな力かは、よく分かんないけど、長門は人じゃないらしいから、そうなんだろう。
出された茶を一気に飲み干すと、俺が言いたかったことを伝えた。
「俺さ、今日はすっげーいい夢を見たんだ!」
「そう」
「なあなあ、聞きたい?聞きたいだろ?」
「聞いて欲しいなら」
「よし、教えてやろう!実はさ、色々と夢見ちゃったんだけど、全部いい夢だったんだよ」
まあ、起きた時には2つぐらいしか覚えてなかったんだけど。
それでも、十分だった。
「まずはさ、長門が俺に甘えてくれてた夢!」
「有り得ない」
「そりゃそうだろ、夢なんだから」
全否定はキツイよ、長門。
だけど、俺は話を続けてやる。
もしかしたら、俺の見た夢全部について話し終えた頃には、やってみようと思ってくれるかもしれないし?
『。』
消えそうな声が聞こえて、俺は長門を見る。
季節は、夏。空は、快晴。
ベランダにて、パラソルの下。
俺は、ハンモックの上で寛いでいた。
『そっち、』
寂しげな瞳が、直視する。
何が言いたいのか分かった俺は、優しく微笑んだ。
『うん、おいで』
嬉しそうに頬を少し赤くして近づいた長門をギュッと抱き寄せる。
素直にそれを受け止めてくれる長門が可愛すぎて、俺はそっと、その頬に口を寄せた。
「却下」
「何が却下!?」
「全部」
「えー?すっげー可愛かったんだよ、長門?俺も格好良いし」
「・・・・・・が大人らしいことが一番不自然」
「そこ!?」
そりゃ、本当の俺はガキっぽいけどさ。
あまり感情が顔に出ない長門が嫌そうにしてるのが分かるってのは、かなり傷つく。
だけど、俺は構わず、次の夢を語ってやった。
『ただいま、有希!会えなくて寂しかったよ』
帰ってきた有希を俺は抱擁で歓迎する。
有希は、特に動じることも無く答えた。
『この場合、は「おかえり」と言うべき』
『だって、俺が先に帰ってきちゃったから、言えないの嫌だったんだよ』
ちゅっと音をたててキスをすると、有希が注意してきた。
『鍋が3秒後に沸騰する』
『え、マジ?火、消さなきゃ!』
『必要ない。もう消した』
慌てた俺と違って、有希はいたって冷静だ。
俺はまた抱きついた。
それはつまり、俺と離れたくなかった証拠だと思えたから。
『有希、愛してる!』
『・・・・・・』
無言は、肯定の意味だと、結婚してから分かるようになった。
「無理」
初めて、感情的な言葉を長門の口から聞いた気がする。
どっちにしろ、拒絶なんだから俺が傷つかないわけないけど。
「何で。こっちは、まだ俺達の性格変わってないだろ?」
懲りない俺は、なんとか思い出した他の夢についても話し続ける。
だけど、どれだけ嬉しい内容であっても、偽りだってことは俺も分かってはいた。
「原因は分からない」
すると、ポツリと長門が口を開く。
「私も夢を見た」
「へー、どんなの?」
「・・・・・・」
言いにくいのか、顔を俯かせる。
「長門。そこまで言っておいて、だんまり?」
「・・・忘れて」
「忘れられるか!」
びしっと長門を指して、涼宮っぽく言った。
「黙秘権なんてありません」
そよ風で靡いた髪が、読書の邪魔をする。
ふと、注意を向ければ、先程まで騒がしかったの声がなくなっていた。
彼女の背に感じる体温から、彼がまだ傍にいることは分かっている。
少し後ろを振り返れば、は彼女を腕の中に包み込んだまま眠っていた。
彼女は、読み終わりそうだった本を閉じた。
そして、身を彼に委ね、目を閉じる。
この平穏さを彼女なりに楽しいと感じていた。
「言わない」
「何で!?」
人には言えない夢でも見たのか、長門は教えてくれない。
そろそろ学校へ行く時間だと言って、はぐらかされてしまった。
「ちぇー。いつか、教えてくれたら良いけど」
「伝える必要が無い」
「・・・長門、ちょっと態度が冷たいぞ」
鞄を手に持って、俺は長門と一緒に学校へ向かう。
その時、どうしてか長門が夢の中と同じように、幸せそうな笑みを浮かべたのが見れた気がした。
-back stage-
管理:少し甘め、というリクにも関わらず。相当甘さが入ってしまいました。
長門:管理人の力不足。
管理:はい、すみません。ギャグ要素もいれて工夫してみたんですけど。
長門:何なら、管理人を消去する。
管理:それだけは止めてー!
長門:如月だけ、作品を持ち帰ることも管理人を消去することも可能。
管理:恐ろしい子・・・!ちなみに、今回は主人公を少し幼くしてみました。
2007.10.02
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