昔から、あの人は憧れで。
同じ場所へと辿り着くのに必死で頑張っていた。
祈りが通じる日
任務を終えて、シランドに戻ったのは夜中。
静まり返ったシランド城に帰宅した。
こんな時間じゃ任務の報告なんてできるわけがない。
仕方なく、習慣になっている祈りを捧げる為に礼拝堂の扉を開けた。
適当に席に着くと、祈りはじめる。
今回も無事任務を終え、怪我なく帰れたことを感謝する。
そして、任務中である同士が無事であるように願った。
あと一つ・・・
「やけに熱心だね。それとも、寝てたのかい?」
想いを寄せる女性の声が背後で聞こえた。
「隠密失格ですね。気配に気付かないなんて」
振り向かずに答えると、彼女は隣に立った。
「今度は気を付ければ良いさ」
「ネル様も任務だったんですか?」
「ああ。ようやく、ひと段落がついたってところだね」
お疲れ様です、と声をかけるとあんたもだろと言われた。
「だけど、珍しいね。こんな時間に帰ってくるなんて」
「ネル様だって、無理に帰ってくることなんてしないじゃないですか」
何時だって、任務さえ終われば日が暮れるだけで近くの町で宿をとる人だ。
朝一番に帰ってくることの方が多い。
するとネル様は口ごもった様子で明後日の方向を見ていた。
「明日、報告したら。は次の任務につく」
「そうなんですか?慌しいですね」
とは言っても、人手が足りないなら当たり前のことかもしれない。
次に隠密が育成されていくのは、何時なんだろう。
育成・・・といえば、ネル様に初めて会ったのは、俺の初めての隠密としての任務の時だった。
任務中に幾度となく綺麗な彼女を見つめては、ヘマをしていた事を思い出す。
それで、タイネーブさんやファリンさんに何度も怒られたな。
思い出し笑いをしていると、不審の念を抱いたネル様が俺を見ていた。
「すみません。ネル様を笑っていたわけじゃないんですよ」
「もし、そうだったら刃を喉元につきつけてたよ」
冗談ではあるんだろうが、背筋が凍った。
そんな俺を見て、彼女は笑う。
「安心して。する気は毛頭ないからさ」
「それだけの実力を持つ人に、そんな事言われたら怖いです」
「実力なら、もあるじゃないか」
ネル様は、手を腰にあてて俺の顔を見入るように首を傾けた。
実力があるといっても貴女ほどではありませんよ。
こんな言葉を口にしようとするだけで、ため息が出てくる。
もっと俺がネル様に近づけていたなら、平気だったろうに。
「まだ足りません」
やっとの思いででてきたのは、この言葉。
彼女は無闇に力を得ることは良くないと言うけど、力が欲しいわけじゃない。
ベンチから立ち上がると、俺はネル様の頬に手を添えた。
その驚いた瞳には、俺の姿だけが映っている。
習慣がついている祈りの内容。
一つは、無事任務を終えることができて感謝する。
一つは、仲間が無事であることを祈る。
そして、もう一つ・・・
「貴女に相応しい男になりたいんです」
そっと髪の上からキスをする。
これだけの行為だったら、アペリスにも許してもらえるかな。
「初めて会った時に比べると、随分と成長したね」
「ネル様のことは、初めてお会いした時から惚れていましたよ」
微笑むと、ネル様は俺の手をはらい、礼拝堂から出て行こうとする。
慌てて声をかければ、彼女は振り向かずに答えた。
「今日はもう寝ていいよ。今のが夢じゃなかったら、また明日伝えてくれるかい?」
ああ、照れてるのか。
思わず失笑すると、怒ったネル様が戻ってきて俺の腕をひっぱった。
頬に微かに触れた唇は、俺を黙らせるのに十分だった。
「い、今のは明日しなくて良いからね!」
・・・それは、明日キスしろって言ってるんですか?
どうやら、俺にはアペリスの加護があるみたいだ。
-back stage-
管理:リクがあったので、書いてみたんだ。
ネル:へえ。これは・・・
管理:なんか、ネルっぽくない・・・かも。
ネル:どうして、こんな話の流れになったんだい?
管理:さぁ。話が短くなりそうでピンチだったから、手に全てを任せたらこうなった。
ネル:これじゃあ、に私のことを「様」付けしたかっただけじゃ?
管理:それは一理ある。
2005.01.27
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