ふぅ、とリグレットは体の力を抜く。

やけに外が静かである。
それだけで、彼女は太陽が傾いて大分経つことを悟った。


 「これでは、また閣下に怒られてしまうな」


苦笑いしつつ、終えたばかりの仕事を片付ける。
その時、来訪者を告げるノックの音がした。


 「誰だ?」

 「です。よろしいでしょうか?」

 「入れ」


彼女の部下であるは、手にティーセットを持っていた。


 「また仕事が長引いてるかと思いましてね」


にっこりと微笑み、その場でお茶の用意をし始める。
慣れた手つきを見ながら、彼女は詫びた。


 「いつも済まないな。もう休んでいていいと言うのに」

 「俺が勝手にやってることですから」


特製のブレンドティーが疲れた心を癒す。
先程より気分が和らいだ。


 「それにしても、頑張りすぎじゃないですか?」


リグレットを心配して言うが、彼女は流してしまう。


 「これも閣下のため。来るべき日のためだ」


何ともないとリグレットは言うが、は信用しなかった。
そっと彼女の額に触れる。


 「まだ熱は無いみたいですね」


わざとらしい敬語が癪に触り、リグレットは手を払い除ける。


 「おまえの素性を知ると、実にその口調が気味悪く感じる」


そう言われたは楽しそうだ。


 「どれだけ気味悪くても、俺の立場は変わりませんからね。口調も変わりませんよ」

 「お前のその公私混同をしないところは褒めてやりたいが、今の私には耐えられないな」


そこまで言われてしまったので、は本来の口調に戻した。
彼女の恋人である時の口調に。


 「我侭な上司と我侭な彼女。どっちの方がマシだろうな?」

 「どちらとも嫌になるほど、悩んでいることなのか?」

 「いんや、全く。リグレットの場合は、甘えてくれないから嬉しい気持ちの方が強い」


空いたカップにおかわりを注ぎ、はそっとリグレットの髪に口づけをする。
積極的な彼の言動に赤面しつつ、リグレットは仕事を続けた。


 「恋人がせっかく甘えてんのに、まだやんの?」

 「もう少しで終わる。それまで待っていて欲しい」


何のためにハーブティを持ってきたんだか、とは落ち込む。
いじけた彼はリグレットの結っていた髪をほどいた。
さすがに彼女も無視はできない。


 「何故、邪魔をする。これが終われば相手をすると言ってるだろう」

 「んなの知るか。俺の口調がって、あーだこーだ言ってきたくせに」


乱暴に彼女の口を塞ぎ、体を引き寄せる。
最初は抵抗していたリグレットも、徐々にほどかされての背に手を回す。
力なく座っている彼女と次の段階へ入る前に、は呟いた。



 「頼むから心配させんな」



 「過労死すんぞ?」

 「それなら、こちらの方も加減してもらいたいな」

 「それは無理」


我侭な部下と我侭な恋人、どちらの方がマシなのだろうか。
そんなことを考えながら、リグレットは目を瞑った。











- back stage -

管理:甘い夢とのことだったんですけど、甘さは足りましたでしょうか?
リグ:私には十分甘い気がするぞ。
管理:ですよねー。アリエッタのマネっこするだけで周りが心配するくらいだもの。
リグ:そこでCDネタを出してくるな、聴いていない者もいるだろうに。
管理:むしろ損してるから聞くべきだと勧めるのも手じゃないか。
リグ:止めろ、私の人格が怪しまれる。
管理:可愛いのに・・・この作品は、銀様のみ持ち帰り/返品可能でございます。

2008.10.07

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