「あんた・・・ブリタニア人?」


突然、勝手に家に上がってきた来訪者に、女はどうするべきか悩んだ。




契約成立




 「ふーん。で、扇は記憶が無いあんたを引き取ったということか」


家主とは長年の付き合いだと言う男は、状況を聞いて考え込んでる。
良い顔を浮かべてはいないが、誰かに知らせる気はないようだ。
扇に迷惑がかからないことに胸を撫で下ろし、彼女は相手の名を聞いた。


 「だよ。あんたは?」

 「私は・・・千草」

 「千草?そりゃまた、ニッポン人らしい名前で」


相変わらず気が回らないやつだ。
呟いたが、彼女に忠告する。


 「外でブリタニア人に会った時は、エイミーを使っておけ」

 「エイミー?」

 「そう、Amy。扇には『アミ』と伝えておくんだ」

 「どうしてですか?」

 「イレブンが読み間違えてることに気をとられて、それ以上は追求しないだろうからさ」


文字もろくに読めないイレブンだと笑う方に忙しくてさ。
自分のことを笑われるというのに、は気にする素振りを見せない。
そんな彼が千草の癇に障った。


 「扇さん達が劣等だと言うんですか」

 「支配者は・・・千草の同類は、そう願っている」


その言葉を千草は重く受け止めた。
も好きで言ってるわけではない。
現実を口にしているだけだった。


何やら重い空気になった中、ほのかに美味しそうな匂いがする。
それが何かをが質問をすると、千草は思い出したように喋った。


 「今朝、扇さんのお弁当を用意したんです。それに使ったものが残っていて・・・」

 「弁当!?」

 「え、ええ。どうかしましたか?」


心底驚いていたは、千草の肩を掴む。
真剣な顔つきで、彼は頼んできた。


 「そんな羨ましいこと、扇にだけさせてたまるか。俺にも作ってくれない?」

 「は、はぁ・・・料理は余ってるので、問題ありませんが」


呆気にとられている千草は、本当に喜んでいる様子のの姿を見ていることしかできなかった。


 「あ、大丈夫、大丈夫。あんたのこと、誰にも言わなきゃいいんだろ?」


彼女がまだ自分に警戒していると感じたのか、は微笑みかける。
何も教えてくれなかった扇を責めることにすると結論付けた彼は、彼女が弁当を用意するのを静かに待った。


千草から弁当を受け取ると、また頼むよ、と礼を述べる。
家を出ようとしたを千草は引き止めた。


 「行ってらっしゃい」


優しい笑みで見守られながら、は出て行った。
家の中が静かになってからも、千草は玄関から離れられなかった。
とても慌ただしく過ぎていった時間が、またすぐに訪れることを願って。


 「明日は、どんな具にしようかしら」


楽しみが一つ増えた千草は、鼻歌交じりで片付けをし始めた。












-back stage-

管理:千草夢!もうマイナーどころでないね!
千草:はぁ。
管理:ちょっと、ちょっと!ここ、あとがきだから。もっと元気だして!
千草:そう言われても・・・いつもこんな感じなので。
管理:ああ、そうですね。記憶を失う前よりマシではあるんだろうけど。
千草:私が記憶を失う、前?
管理:おっと、失礼。君は何も知らなくてもよいのだよ。これから千草を書く時はこの主人公になります。
千草:作品のタイトルが意味深だったのは・・・
管理:特に意味はない。

2007.03.31

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