今日は開いているだろうか。

不安と期待を胸に、そこへ足を向けた。





適度






 「いらっしゃい、八雲ちゃん」


商店街の脇道にひっそりと建っている本屋。
中が狭いので、カウンターに店長が座っていることが入り口からでも分かった。


 「こんにちは」

 「今日も立ち読みで?」

 「あ、いえ。新刊書を」

 「そうだった!今日、それがあったんだっけ。忘れてたな」


なんでか店を開けていないといけないと思っていたんだ、と彼は微笑む。



ここに来ることは『運命』じゃないかと今も信じてる。
そうじゃないと、道から外れたお店を見つけることはできなかったから。



店長であるさんは、姉さんととても似た性格をしている。

すごく気分屋で、この書店も何時開いているか分からない。
毎日様子を見れば、パターンが分かるかと思えたのに、全くそれが無い。
だから、自分の用事もあってなかなか会うことができない。


 「はい、これだね」


一つ一つのボタンを押して、会計を済ませる。
さんが好きな作家の新刊書を手にすると、彼は聞いてきた。


 「今日は立ち読みしてく?」


小さな本屋ともなると、購入しなくても融通が利くようになった。
おかげで、開いてさえいれば図書館じゃなくて、この店で読む習慣がついた。
そして、さんは優しいことにレジカウンターの隣に私が座れるよう、椅子を用意してくれる。


 「いえ、今日は遠慮しておきます」

 「なんか用事でもあるの?」

 「いえ、そういうわけじゃないんですけど」

 「じゃあ、ちょうどいいや。デートしようか」


予想もしていなかった単語に私は顔が熱くなるのを感じた。


 「実はさ、この店の辺りに金木犀があるのか匂いがきつくて。早くここから出たかったんだ」

 「だったら、何時ものように早仕舞いすれば良かったのに」


されたらされたで、さんに会えなかったから悲しいけど。


 「言ったろ?なんでか、今日は開けておかないといけないて思ったって」


ニカッと笑うさんを見て、言いたいことが分かった。
彼は、私を待っていてくれたということ。


 「さんは、金木犀の香りが嫌いなんですか?」


お店を閉める準備をしているさんを待っている間、話しかけてみた。


 「嫌いじゃないけどね。ずっと鼻にくる匂いがするのも、どうかと思わない?」


それほど時間をとらずに準備をすませると、私達はお店の外へ出た。
彼が嫌がる金木犀の香りが、風にのってここまで辿り着いた。


 「やっぱ、臭うなぁ」


顔をしかめてぼやくさんを見ていると、また笑顔が見れた。


 「何事もきつくないぐらいが良いよね」


何を言っているのか分からない私を無視して、さんは商店街へと歩いていった。
追いかけなきゃ、と思って歩み寄れば、手がつながれた。


 「お茶でも飲みに行こうか」



私が手に持っていた本をさんは当然のように持つと、近くの喫茶店へと向かった。











-back stage-

管理:お待たせしちゃいました、八雲夢!
八雲:でも。なんで、私だったんだろう。
管理:そりゃ、可愛いからさ!
八雲:で、でも姉さんや先輩達の方が可愛いと思うし。
管理:・・・天満を書ける人は尊敬するよ。
八雲:(確かにそうかもしれない)でも、私の設定も無視してないかな。
管理:・・・心が読めちゃうってやつ?まだ分からない段階、てことで。苦笑

2005.10.08

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