「あ。ちょっと、待って!」
死者の指輪を探す為、一行が車で移動していた時だった。
急に声を上げたウルフィーナに、皆の視線が彼女に向く。
「ねえ、今日はこの町に泊まっていかない?」
「何言ってんだ、このまま進むぞ」
ガンマが首を縦に振らないので、ウルフィーナは彼の頭を掴んで、無理矢理頷かせた。
スミスもエルウッドもそこまでされては抵抗しようがない。
仕方なく、車を置く場所を探すことにした。
綺麗なもの
「久しぶりだね、ちゃん!」
突然の訪問者に、相手はもちろん驚いた様子だ。
しかも、元気に挨拶したウルフィーナの後ろに男三人がいるのだから、怖くないはずがない。
「・・・え、ウルフィーナ?」
「そうそう、ちゃんの愛しいウルフィーナちゃんよ!」
「ああ、そのテンションは、確かにウルフィーナだな」
軽く冗談をあしらわれたのを見ていたガンマが、耐え切れずに吹きだしてしまう。
彼女はそれを殴り飛ばしてから、中性的な顔立ちの青年に用件を述べた。
「今夜、ここに泊めさせてもらえない?」
「別に構わないよ。四人泊めさせるとなると、ちょっと狭いだろうけど」
人数を確認してから、はキッチンへ足を運ぶ。
冷蔵庫の中身を見てから、唸り声をあげた。
「材料が少ないし、買いに行くか」
扉を閉じようとした彼の手を防いで、ウルフィーナも中を見る。
「これだけあれば作れるよ、ご飯」
「そう?なら、任せても良い?」
「もちろん!」
思いもよらないの発言に男一人が大げさに反応する。
ガンマだった。
「お前、知らないなら教えてやるけど、こいつの料理はものすごく不味そうに見えるぞ!」
「あはは、知ってるさ。見かけは闇鍋そのものだよな」
今夜の料理人が取り出したフライパンで頭を叩く。
殴られた二人は、仲良くたんこぶを作った。
「でも美味くて、病み付きになるんだ」
微笑まれたウルフィーナは照れくさくて、料理の準備に集中することにした。
残された男三人は、リビングに通される。
話が一段落したのを見届けて、スミスが訊ねた。
「それで、ちゃんは彼女とどのような知り合いで?」
「・・・あんた、絶対に俺がちゃん付けされるの嫌だと分かってて言ってるよな?」
「え、そうなの?」
食えない男だ。
気にしないことにして、は彼等に説明をした。
「ウルフィーナがこの町に来た時、ちょうどマフィアのボスが逃げ込んでて、一緒に退治した」
「て、説明、それだけ!?」
エルウッドがつかさずツッコミを入れる。
全てを語りたくなかったは、渋った。
しかし、手際良く準備を済ませてきたウルフィーナが詳細を伝えた。
「そのボスってば、女に目が無くてね。だけど、あたしはジャーナリストとして顔が割れてる」
「もう言うな、ウルフィーナ!」
「でも、女の子を危険な目に合わせたくなかった時、ちょうどちゃんに会ってさ」
その先は言わずとも分かるだろう、と言う代わりにウインクをする。
三人に意味が伝わった。
「その時の写真とか無いの?」
「あるわよー、いつも持ち歩いてるのが」
「そんな物、見せないでいいから!」
が止めるが、彼女はスミスに写真を手渡す。
写真と見比べられ、何も言われずに返す方が、には気になって仕方なかった。
「そろそろご飯ができた頃かな?」
「あ、本当だ。火加減を見なきゃ」
違う話をされてしまっては、聞きたくても聞けなくなる。
じれったい思いで、はウルフィーナの手伝いをすべく、腰を上げた。
「ていうか、何であの時の写真を持ち歩いてるわけ?」
闇鍋と言われた煮込みスープの味見をする彼女に問いかける。
何が気に入らないのか分からないウルフィーナは、平然と答えた。
「可愛いから」
「それだけの理由で、人に見せびらかすな」
軽くチョップを入れられただけだというのに、痛そうに頭を抱える。
は自分が闇鍋発言をした時に受けた攻撃の方が痛かった、と言いたくて仕方なかった。
もちろん、そんな自ら危険な目に合うような発言はしなかったが。
「でも、あの時は楽しかった!あたしの大切な時間の一つになったよ」
「そりゃ、危険なことは全部、俺に回ってきたから。苦労してないでしょ、ウルフィーナは」
「そ、そうだっけ?」
「そうでした」
完成した料理を運び出すに、ウルフィーナは申し訳なさそうにした。
いつでも後先考えずに行動してしまうことを反省している様子を見て、は笑う。
「ま、俺にとっても大切な思い出になったけど?」
皿を運びながら言ってくれたことに喜んで、ウルフィーナが彼の頭を脇に抱く。
乱暴に撫でられるのは辛かったが、も楽しんでるようだ。
「いつまで待たせる気だ、あいつら?」
何でも良いから早く食べたいと願うガンマは、二人の様子を見て呟いた。
-back stage-
管理:アスカさんのリクで書いてみました、ウルフィーナ夢。
ウル:て、あたしの登場、あまり無くない?
管理:あー、ごめんなさい・・・一人だけだと話が長くならなくて・・・
ウル:しかも、勝手にガンマ達と再会してる設定になってるし。
管理:いいじゃん、きっとそうなってただろうから。
ウル:・・・結局、自己満足が大半な産物じゃない。
管理:ギクッ。
2007.04.12
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