初恋



 「だぁぁ!テメェが掃除やれ!」

 「だ、駄目だよ、テッサイさんに怒られるよ」


店の玄関を掃除していると、いつものようにジン太がウルルを苛める。
そこに、一人の少年がジン太の背中を蹴った。


 「ウルルを苛めてんじゃねぇよ、このクソガキ」

 「て、お前もガキじゃねぇか!」

 「人を苛めるしかできない子供に言われたかないね」


舌を出して、ウルルを守る体勢に入る。
二人が睨みあっていると、店内からテッサイが現れた。


 「何の騒ぎですかな?おや、どの。買い物ですか?」

 「違ぇよ。喜助、いるか?」

 「はい。少々お待ち下さい」


店内に入ったテッサイがいなくなると、ジン太が喧嘩を売ってくる。
それを買おうとしたは、現れた喜助によって止められた。
彼の挨拶を無視して、用件を伝える。


 「おい、喜助。ウルル貸せ」

 「乱暴な言い方っスね、さん」

 「一応許可もらおうとしてるだろ」

 「おやおや。ウルルの父親に対して、その言い草は何ですか?」


喜助は扇子で口元を隠し、目線だけで訴える。
女性ならばその表現に惹かれるのだろうが、は苛立つだけだった。
しかし、喜助がウルルの父親だと信じている彼は、抵抗ができない。


 「・・・ウルルさんとお出かけしてもよろしいでしょうか」

 「どーぞ、ご自由に」


遊ばれているだけだと知らないは、ウルルを店から連れ去った。








 「君、どこ行くの?」


店を出てから、ひたすら歩き続ける彼にウルルが声をかける。
は答えなかった。


 「ねえ、君」

 「うっせーよ!どっか行かねえといけねぇのか?!」


顔を真っ赤にしたが彼女を怒鳴りつける。
それを見たウルルは、慌てて言った。


 「そ、そんな事ないよ」

 「だったら、聞くな!」


何で怒っているのか分からないウルルは、仕方なく黙る。
だが、はまたしても怒鳴った。


 「お前、黙ってないで何か喋れよ、デートなんだから!」

 「え。これ、デートなの?」

 「ち、違ぇよ!勘違いするな、馬鹿が!」


口を滑らしたは、彼女を罵って誤魔化そうとする。
だが、彼は後悔した。
彼の今の言動は、彼が嫌いなジン太とそう変わらないからだ。


は、ウルルが好きだ。
それを自分も周りも知っている。
ウルルが、何でか気づいていないだけだ。
その事が余計に余裕を保てられなくなるのか、彼は優しく接する事ができなかった。


何とかした方が良いよな。
そう思って、今日はデートに誘ったつもりだった。
今の所、何も成功していないが。


 「畜生。こうなったら、強行手段だ!」


勇気を振り絞ったが、ウルルの頬に唇を掠める。
これで自分の気持ちが伝わっただろうと、耳まで赤くした彼は、ウルルの返事を待った。
しかし、彼女は首を傾ける。


 「急にどうしたの、くん?」

 「・・・何でもねぇよ!」


ここまで鈍い女を好きになるんじゃなかった。
報われない気持ちを彼女に八つ当たりして、また歩く。


結局、その日は何の進展もなしに一日が終わった。











-back stage-

管:短めながらも、初ウルル!
雨:はぁ・・・
管:今回は、男主が少年になってしまった。性格が幼稚。
雨:でも、設定がサラリーマンだと犯罪になるかも。
管:・・・そこらへんは、つっこまないでおくよ。
雨:そうですか。

2006.10.28

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