虚無



目の前に暗闇が広がっている。
壁も床も空も、何も無い。


 「なんだ、ここ?」


先程まで、自室で寝ていたと思っていたは呟いた。
その声を聴きつけたのか、誰かが答えてくれる。


 「ここは、何処でもない」


いつの間にか、の隣には長門有希が立っていた。
状況についていけない彼は、もう一度聞いた。


 「なんだって?」

 「虚無の世界。涼宮ハルヒが、捨てた世界」


どうして、そこでクラスメートの名が出てくるのか。
その質問には、彼女は答えてくれなかった。


 「で、どうして長門が俺の部屋にいるんだ?」


無言で見つめられ、はたじろぐ。
自分の愚かさに気づけとでも言われているかのようだった。


 「ああ、ここは何も無い所、だったっけ。もう俺の部屋じゃないんだよな」


こくりと彼女が頷く。
その動作を追って下を向いた際、は驚いた。


何も見えない空間。
今更、自分達がどのように立っているのかという疑問が出てきた。


 「私の目的は、の救出」


未だに事態を把握できていない彼を無視して、機械のように喋る。
救出だなんて言葉を使われては、誰だって慌てる。
は、彼女を止めた。


 「よく分かんねぇんだけど、俺ってピンチなの?」


今度は、頷かない。
既に彼女が分かっていることは、再度伝える気にもならないようだ。
は、質問を変えた。


 「もし、ここにずっと居てたら、どうなるわけ?」

 「消滅する」


簡潔すぎて、頭がよく機能しない。
しかし、人間、窮地に立たされると、不思議と冷静になる。
そんな作用がにも起こった。


 「長門は、俺を救出するんだよな?」

 「そう。貴方も重要な監視対象だから」

 「んー、そこらへんは良く分かんねぇけど・・・お前も俺と一緒に戻れるってことか?」


すると、彼女の首は横に振った。
微動であったのは、何かしら躊躇いがあったからだろうか。


 「私は貴方と一緒にはいられない」

 「どうして?」

 「涼宮ハルヒが望んでいないから」


またクラスメートの名が出てくる。
だが、にとっては、それよりも気にする事があった。


 「長門と一緒に帰れないのは、嫌だな。かと言って、死にたくもねぇし」


名案が浮かび、彼は嬉しそうに言った。


 「俺が違う世界を創ればいいんだ!」


相手は表情を変えない。
そうなる事を予測していたのかもしれない。
黙って、が言うことに耳を傾ける。


 「そしたら、長門も俺と一緒に居られるよな?」

 「私は、涼宮ハルヒを監視しなければならない」

 「じゃあ、涼宮をこっちに居させれば良いんだろ?」


簡単じゃん。
ふつふつと体の奥から、力を感じる。
今の自分なら何でも出来ると、は確信した。


 「な、良いだろ?俺、長門と一緒にいられる世界を創ってやるよ」


闇の何処からか、光が差し込む。
彼等がいるところが、壁や床で囲まれる。
無かったモノが形成されていった。


 「来るだろ、長門?」


無邪気な笑みで、彼女の前に手を差し出す。
その時だけは、彼女も自分の意志で手を取るべきか否か、判断すべきだと思った。



それならば、答えは一つ。
小さな手は新しい創造主の手の上に重ねられた。














-back stage-

管理:無から始まるもの。という感じで書いてみた。
長門:涼宮ハルヒと同じ能力を持つ生物がいたら、迷惑。
管理:いや、まぁ、そうだけど。仮に、な話じゃん。
長門:宇宙全体の危機に関わる。
管理:うーんと、だから、これはさー。
長門:変更を要求する。
管理:話を聞いてくれー!

2007.06.14

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